攻守に世界最高の力を持つモドリッチ
特筆すべきはモドリッチ。この試合では長短織り交ぜたパスで狭いスペースを切り裂いた。難しい体勢からワンタッチで一気に逆サイドの味方へとつなぐ技術は、世界中でも最高といえるだろう。さらに守備面でもピッチを広くカバーし、3度のインターセプトでアルゼンチンの攻撃の芽を摘むなど存在感を発揮した。
攻撃的なタスクを担えば、ピッチを支配する力を見せ、守備のタスクを担えば豊富な運動量と頭脳的なディフェンス能力で世界最高峰の守備的MFと化す。16/17シーズン、カンプ・ノウで行われたクラシコにおいて、中盤の底で起用された際に見せた姿は「カンテ以上」とも称えられた。
そして、とどめは自らのゴール。ペナルティアークの手前でボールを持ち、対峙する相手CBのオタメンディを物ともせずゴールを記録した。ボールを持っていてもいなくても、モドリッチは中心人物として試合を動かす。
一般的に、その時代で最高の選手という称号は得点を量産する選手や飛び抜けた攻撃的スキルを持つ選手に与えられる。しかし、実際にピッチ上で攻守に力を発揮するという点において、現在世界最高の選手と言えるのはモドリッチだろう。
さらにモドリッチとコンビを組むラキティッチの存在も大きい。モドリッチと同様に敵陣アタッキングサードから自陣ゴール前まで幅広くカバーし、62分と63分には立て続けにゴールへと向かうメッシを止めた。
普段、バルセロナではメッシにとって最高のサポート役となっているが、この試合では“目の上のたんこぶ”といえるほどに自由を奪う存在となっていた。
そして、アディショナルタイムにはコバチッチのアシストからチーム3点目となるゴールを決めた。アルゼンチンにとって、3-4-3へのシステム変更によって、モドリッチとラキティッチをより危険なエリアを中心にプレーさせることとなったのは“誤算”だったはずだ。