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代表 6年前

驚異の19歳、ムバッペとは? 次々と偉業達成、フランスをけん引する怪物FWの進化【ロシアW杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

攻守における貢献度の変化。代表OBが指摘する輝きの理由

 記者会見では「ディフェンスでも動きが自然になって成長しているようだ。個人のディフェンスでも違いを作れるようになったのでは?」といった質問も飛んだ。それに対しムバッペも「チームが全体のために犠牲を払うことを必要としているなら、そうしなければならない。犠牲を払うだけでなく、守備でもいろいろなものをもたらせると思う」と同意する。

 モナコ時代にティエリ・アンリが持っていたクラブの最年少得点記録を17歳26日で塗り替えた“アンリ2世”は、これまで爆発的なスピードと卓越したテクニックの融合、さらには年齢に似つかわしくない精神面の落ち着きといった要素を高く評価されてきた。

 それが高い得点力を支え、ゴールもアシストもできる万能アタッカーとして急速な進化を遂げている。それに加えてペルー戦では守備面での成長も見られた。ボールを奪われると4-4-2でブロックを敷くフランスにおいて、右サイドを担当したムバッペは的確に相手サイドバックやウィングを追い込み、チームの一部として確かに機能していた。

 フランス代表のディディエ・デシャン監督も試合後の記者会見で、ムバッペについて「彼は非常に若くしてゴールを決めた。彼には自らのクオリティを表現できるスピードという資質がある。今日は組織的に戦う上で正しいことをしていた。彼はそれをどうやればいいか知っていて、しっかりこなすことができる。これは犠牲を払うということではない。チームがうまく守れれば、良い攻撃に繋げることができるんだ」と攻守における貢献度の高さを賞賛した。

 ストライカーとしての類稀な資質を秘める一方で、守備にも貢献できるインテリジェンスも備えた“半端ない”19歳にとって、最適な役割とは結局のところ何なのだろうか。この問いについての答えを、元フランス代表DFパトリス・エヴラが英『itv』の試合後討論の中で示している。

「ムバッペは中央よりもサイドでプレーした方がずっといいと、僕は思っている。ジルーが真ん中で、ムバッペがサイドという形だ。彼はPSGでプレーしているのに、ネイマールの影響を受けていないというのは非常に興味深い。モナコでプレーしていた頃はほどほどな印象だったが、今の彼からはちょっとした華やかさみたいなものを感じる」

 実際、苦しみながら勝利したオーストラリア戦でフランスの前線は中央にムバッペ、サイドにグリーズマンとウスマンヌ・デンベレという構成だった。しかし、この組み合わせはうまく噛み合わず、攻撃が停滞してしまった。

 ところがペルー戦で最前線にジルーが入り、その背後にグリーズマン、サイドにムバッペとブレーズ・マテュイディが配置されると、それぞれの役割が明確に整理されて、チーム全体のバランスが劇的に改善された。

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