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代表 6年前

スペイン代表が示した強者の貫禄。復活のティキ・タカ、蘇る南ア大会優勝の感覚【ロシアW杯】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

イランが敷いた「6バック」の徹底守備。スペインはどう崩したか

 イラン戦に関しては相手がゴール前を6人で固めているため、単純なパス回しでスペースを作ることはほとんどできなかったが、スペインはアンドレス・イニエスタやダビド・シルバ、イスコといった選手が幅広く動きながらボールに絡み、左右を大きく使いながら主導権を掌握した。

 前半の25分まででスペインのボールポゼッション率は77%記録していた。このことからも、どれだけ圧倒的にボールを支配していたかがわかる。とはいえ本来、局面で数的優位を作りやすいはずのサイドの深い位置でも相手の選手が密集していて、決定的なチャンスを作るには至らなかった。

 前半最大のチャンスはアディショナルタイムの46分、イニエスタの縦パスを起点に細かくつなぎ、ダビド・シルバのシュートがイランのDFにブロックされた場面。スペインは前半だけで10本のシュートを放ったが、枠内に飛んだのはダビド・シルバのフリーキックの1本のみだった。

 とはいえ、スペインもイランが徹底した守備的戦術を採ってくることは想定していただろうし、おそらく前半はゴールが生まれないことも織り込み済みだっただろう。勝負をかけるのは後半で、前半はそのための下準備に過ぎなかった。

 後半に入ると、イランの選手たちの動きは明らかに落ちていた。ボールや人に対する寄せのスピードと精度がガクッと落ち、49分のコーナーキックに合わせたジェラール・ピケのヘディングシュートや、50分のセルヒオ・ブスケッツのミドルシュートなど、立て続けにチャンスを作られていた。

 前半終了時点でパス成功数で300本近い差が生まれていたが、その影響は意外に早くピッチ上に現れ始めた。54分、試合の流れを大きく変える1点が生まれる。スペインのスイッチを入れたのは、やはりこの男、イニエスタだった。

 中盤右サイドでボールを受けると、得意とする相手の裏をとる動きでひらりとディフェンスを1人はがし、一気に前へ運ぶ。そしてダビド・シルバとのワンツーパス交換で2人目をはがし、周囲の視線を釘づけにして、厳しいマークの呪縛から解き放たれたジエゴ・コスタにラストパスを通した。

 2試合連続となる今大会3得点目を挙げたストライカーは、それまでスペースがなく試合に絡めていなかったので、明らかに苛立っていた。だが、ここぞのタイミングで冷静かつ繊細なボールコントロールとゴールへの嗅覚を見せるのだから恐ろしい。スペインはおそらくこの1得点で勝利を確信したはずだ。

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