初戦のキーワードは「トリック」
韓国代表のシン・テヨン監督は、ロシアワールドカップ直前からあるキーワードを口にしていた。それは「トリック」というものだった。
ボリビアと0-0で引き分けた試合でも、完全非公開でセネガルに0-2と敗れた際にもこのキーワードが登場した。
彼は取材陣に対し、「これはスウェーデンとの試合に備えたトリック」だと説明していた。背番号も「偽装」していたのである。普段7番を背負うソン・フンミンは13番を、16番を着けるキ・ソンヨンは24番を背中に刻んだ。シン監督は「欧州の人はアジア人の顔がはっきりわからない。偽装背番号で相手を混乱させたい」と堂々と話していた。
しかし、取材陣の頭も混乱していた。「こんな工夫をする前に戦術的な分析に時間を使うべき」という声も上がった。チームの練習も冒頭15分間の公開のみ。取材陣も一体韓国が何をやりたがっているのかがはっきりとわからない。そんな中、スウェーデンからスパイを送り込んだというニュースも流れた。ヤンネ・アンデション監督は公式記者会見で「謝罪したい」と語ったが、非公開練習の内容も相手にはすでに暴かれているはずだった。
そして18日、ニジニ・ノヴゴロドで行われたスウェーデンとのワールドカップ初戦で、シン監督が用意した「トリック」の正体が明らかになった。強化試合で一度も使ったことがない、4-1-2-3の布陣だった。
しかも身長196cmのFWキム・シンウクの1トップという作戦である。強化試合で4-4-2や4-2-2-2を基本としたフォーメーションを採用し、ソン・フンミンとファン・ヒチャンといった前への推進力を武器とするFWをベースに2トップを組ませていたため、3トップは驚きの選択だった。
とはいえ4-1-2-3はスウェーデンに合わせた作戦だった。メンバーの平均身長が180cmを超える相手に対し、攻撃的に競り合うカードとしても、セットプレーの守備の駒としてもキム・シンウクの身長は申し分ない。
キム・シンウクが守備との駆け引きをし、そのプロセスの中で生まれるスペースをソン・フンミンとファン・ヒチャンが生かすという案だった。シン監督は「試合で出したことはないが、トレーニングではずっとこのカードを準備してきた」と話した。