孤立したルカク。引いた相手を崩しきれず
ベルギーは、選手個々の能力では世界でも有数のレベルの高さを持つものの、戦術面に課題が残り前任のヴィルモッツ監督を解任。スペイン出身のロベルト・マルティネス監督を招聘して戦術強化を図った。
しかし、本大会を前にその課題は克服されることなく、選手個人の力に頼る戦いに終始していた。
この試合の前半でも後方で守備を固めるパナマを相手に連係で崩す場面は見られず、センターFWのロメル・ルカクがボールに触れた回数は45分間でわずか7回。これは、パナマの選手を含めてピッチ上の22人で唯一の一桁台で断トツに少ない数字だった。
結果的にメルテンスの個人技によって1点を奪い、パナマが前に出たことでスペースが生まれ、アザールとデ・ブルイネが自由を得た。逆に前半ではフリーロールとして動くアザールは周囲と合わず、デ・ブルイネは76%と低いパス成功率にとどまっていた。
ウイングバックを務めたカラスコやムニエが絡むような攻撃の形も少なく、やはり選手個人の力に頼るしかないという印象は否めない。もちろん、この試合のように最終的に試合を決めるのは個人の能力となる場合も多いが、この先よりレベルの高いチームとの対戦となると不安が募る。
ただ、ベルギーにとって幸運だったのは、パナマ、チュニジア、イングランドと続く対戦順である。ちょうどいい具合に1試合ずつ相手のレベルが上がっていく日程は、チームの状態を上向きにさせる絶好の流れといえる。
どの強豪国にも言えることだが、最大7試合を想定しているチームの初戦は選手のコンディション、チームの状態ともに決して万全ではないのも事実。今後、五分の力を持つチームとの対戦でベルギーがどのような戦いを見せるのかは、今大会の大きな楽しみの1つとなるだろう。
(文:海老沢純一)
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