攻守に期待のかかるピシュチェク
ノルマ:1勝
目標:決勝トーナメント進出
攻撃が上手くハマれば、決勝トーナメント進出は十分に可能。ボール奪取時に前へ素早く切り替え、複数の選手がタイミング良くギアを上げて繰り出す速攻は、グループHのどの対戦国にとっても脅威となるだろう。
そんなポーランドのお株とでも呼ぶべきカウンター時には、カミル・グロシツキに要注目。6月8日に30歳の誕生日を迎えたばかりのアタッカーは、エースFWレバンドフスキに比べれば、確かに目立たない存在かもしれない。所属先はハル・シティ。主戦場は強者どもが集うチャンピオンズリーグからも、曲者どもが集うヨーロッパリーグからも遠く離れた、イングランド2部のチャンピオンシップだ。
だからと言って、決して侮ることはできない。戦術理解度は高く、攻撃から守備、守備から攻撃へのフォーメーションチェンジにスムーズに対応。アウトサイドを本職とする選手らしく、守備時には献身性を発揮し、走力を活かして敵に圧力を掛けていく。いわゆる“良く走る”選手だ。
そしてグロシツキが持ち味を十分に発揮するのは、やはり攻撃時である。味方がボールを奪えば、爆発的なスピードで裏に抜け出す。左SBリブスとのコンビでサイドを攻略し、チャンスを演出。GKと1対1の局面を迎えれば、正確なシュートテクニックでゴールを奪う。
16年、フランス開催のEURO。スイスと戦ったラウンド16では、左サイドからドリブルで中に切れ込んでブワシュチコフスキのゴールをお膳立て。チームのベスト8進出に貢献した。続くポルトガルとの準々決勝でも、左サイドを突破してグラウンダーのクロスを入れ、レバンドフスキの先制弾をアシストした。地味かもしれないが、きっちりと仕事をこなしていくタイプの選手。グロシツキの着実な任務遂行能力は、ロシアW杯本大会でも要所要所で効いてくる違いない。
一方で守備陣では、グリクの状態が万全とは言い難い今、ウカシュ・ピシュチェクに期待したい。所属先のボルシア・ドルトムントでも重鎮となりつつある33歳のSB。ブンデスリーガとチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグなどで積み重ねてきた経験と実績では、グリクに勝る。ポーランド代表では3バックの一角もこなす。ベテランらしく守備陣を束ねてくれるはずだ。攻撃時の果敢なオーバーラップ、そしてドルトムントで培った同サイドのブワシュチコフスキとのコンビネーションも、対戦国のDFたちにとって脅威となるだろう。
レバンドフスキだけではない、多士済々のポーランド代表。かつてアーセナルで同僚だったユベントス所属のシュツェスニー、スウォンジー所属のファビアンスキと、GKのレベルも高い。大国の影に隠れがちだが、謙虚かつ虎視眈々と、ドイツ大会以来の出場となるW杯での勝利を狙っている。
(文:本田千尋)
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