見事な復活劇。4年前に断念した夢の舞台へ
だが彼は諦めていなかった――。モナコに戻った2016/17シーズン以降、コロンビアの虎は野に解き放たれた野獣のように躍動していた。興奮した目を光らせてボールを追うあの頃の姿が戻ってきたのだ。
2016年11月2日に行われたチャンピオンズリーグ、ホームにCSKAモスクワを迎えたモナコは前半、左サイドからの低いクロスに、フリーになっていたファルカオがタイミング良く滑り込んでネットを揺らした。ハーフタイム直前にはペナルティエリア内でボールを受けたファルカオが反転してループ気味のシュートで2点目を決めている。
いずれもファルカオらしいゴールで、始めは疑心暗鬼だったコロンビアのメディアもこの日を境に、「ファルカオ復活」「よみがえる虎」などという見出しを掲げ始めた。その2日後にはおよそ1年ぶりにコロンビア代表にも招集され、リーグ優勝も手にした。2016/17シーズンはリーグ戦21得点、翌2017/18シーズンは18得点の堂々たる数字を残して復活を果たしたのだった。
ファルカオの従兄弟でコロンビアの名門ジュニオルの下部組織でプレーした経験を持つラファエル・カルロにも話を聞いた。
「彼は真面目で大人しい性格なのに、ピッチに立つと人が変わってしまう。そのギャップに驚いているよ。試合終了間際までゴールを諦めず、少しでも隙があれば狙ってくる。俺はディフェンダー出身だけど、ゴール前の彼は怖いと思うよ」
2014年ブラジルワールドカップで我々は彼の姿を見ることができなかった。だがロシアワールドカップでは、世界最高のストライカーと呼ばれ、欧州最高峰のマーカーたちを蹂躙してきたファルカオを目撃することになるはずだ。
(取材・文:北澤豊雄)
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