ポゼッションはカウンターのリスクと紙一重
対するドイツは、73分のマルケス投入後に5バック気味の布陣に変更したメキシコを、最後まで崩せず。78分にゴメスを投入して空中戦を強化したが、87分のキミッヒからのクロスに合わせたヘディングは枠を捉えることはできず、高さでゴールを脅かすこともできなかった。
85分にブラントを投入するも、89分のミドルシュートは左のポストを直撃。ベタ引きのメキシコから最後の最後までゴールを奪えず、連覇に向けて「重要な」初戦を落とした。
何度も簡単にボールを失ったことについては、フンメルスも試合後に言及。W杯という大舞台で、メキシコという「コレクティブで強く危険なチーム」にやすやすとボール奪取の機会を与えることは、自殺行為以外の何物でもない。
相手は王者にひと泡吹かせようと舌なめずりをしていたチーム。とりわけ敵陣に入ってポゼッションを高めようとするのであれば、カウンターに対するリスク管理を徹底することは、基本中の基本とも言える。
しかし、どんなスタイルであれ、そもそも軽率なプレーが続いては、やはりW杯で勝つことは難しいだろう。次の対戦相手スウェーデンも、メキシコの戦い方を参考にしてくるはずだ。不用意なボールロストを避けるのはもちろんのこと、王者の風格を取り戻し、勝ち点3をもぎ取る必要がある。
クロースは言う。
「僕らは今ではもうプレッシャーにさらされている。次の両方の試合で勝ち点6を掴まなくてはならない」
連覇への道は、平坦ではない。
(文:本田千尋)
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