スペインで成長した守備への意識
実際、2010年南アフリカ大会・デンマーク戦(ルステンブルク)で本田と遠藤保仁が続けざまに直接FKからゴールを決めたような展開に持ち込めれば、日本にとって理想的なシナリオだ。総合力で上回るコロンビアが主導権を握る展開になると予想されるだけに、セットプレーの重要性は非常に大きい。それを本人もよく理解しているはず。
「コロンビアがどうこうと言うより、まずは自分がしっかりといいボールを蹴ることを意識したい。どんな相手でも狙いを持って、チームとして合わせられればセットプレーは得点源になると思います」と柴崎は冷静に状況を見ながらボールを蹴り分けていく考えだ。
もちろん流れの中のプレーも重要になってくる。パラグアイ戦で左右のサイドに多彩なサイドチェンジを蹴り分け、チャンスを作ったように、柴崎の視野の広さと戦術眼には卓越したものがある。それをコロンビア相手にも繰り出せれば、日本の得点チャンスは広がるはずだ。そういうプレーができる選手は今のチームにはいないだけに、彼に寄せられる期待は大きい。
いい攻めを仕掛ける前段階として、ボール奪取や相手をつぶす守備的な仕事も求められてくる。その部分に関しては、スペインに渡ってから飛躍的に向上した印象だ。鹿島アントラーズ時代は敵に対しての寄せや球際が甘かったり、ボールへの執着心が薄かったりする部分も垣間見られたが、海外に出て守りの重要性を再認識したことで、プレースタイルがガラリと変わった。その経験値があるから、彼自身も「ワールドカップだからと言って特別なことはしていない。いつもと同じようにのぞんでいる」と平常心を保てているのだろう。
こうした落ち着きは人間的成長の表れでもある。
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