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代表 6年前

ドイツ、連覇へのテーマは“可変性”。美学ではないポゼッション。理に適ったザネ落選【ロシアW杯注目国分析】

ついに開幕した2018 FIFAワールドカップロシア大会。各国がそれぞれの目標を達成するために23選手を選抜し、コンティション調整を続けている中、本大会初戦を前に注目国の状況をチェックする。今回はグループFのドイツ代表を取り上げる。(文:本田千尋)

text by 本田千尋 photo by Getty Images

ポゼッションとカウンターを高い次元で併用

ドイツ代表
ドイツ代表はワールドカップ連覇に挑む。ヨアヒム・レーブ監督は高次元のチームを作り上げた【写真:Getty Images】

【ドイツ代表】
FIFAランキング:1位(2018年6月)
監督:ヨアヒム・レーブ(2006年~)
17大会連続19回目の出場
最高成績:優勝(1954年スイス大会、1974年西ドイツ大会、1990年イタリア大会、2014年ブラジル大会)
欧州予選グループC 1位通過

 ヨアヒム・レーブ監督は、高い技術によるショートパスを基本にしたサッカーを志向する。だが、ドイツ代表にとってポゼッション・スタイルは、どんな時でも貫くべき理想でもなければ、美学でもない。

 確かに欧州予選では、チーム全体を押し上げて敵陣で細かくパスを繋ぎ、相手を圧倒。43得点4失点、10戦10勝の成績でグループCを首位通過した。しかし、北アイルランド、チェコ、ノルウェーといった格下との対戦が続いたため、必然的に相手を押し込む試合展開になった側面もある。高いボールポゼッション率は自然発生現象でもあるのだ。

 予選のような2年に渡る長期戦ではなく、1ヶ月の短期決戦であるワールドカップ本大会では、効率性が重要な要素となる。予選に比べ試合毎の間隔がはるかに短く、個々の選手のリカバリーに割ける時間は限られる。

 よって戦術理解度の高い、複数のポジションをこなせる選手を選考するのはもちろんのこと、実際のトーナメントでも相手や試合中の状況に応じた柔軟な戦術選択が重要になってくる。不用意な消耗をいかにして避けるか。特定の選手と戦術だけでは、頂点に辿り着くことは難しい。

 そこでドイツ代表は、試合中の場面場面によっては、フィジカルを活かしたカウンターで前に出ることにも躊躇いはない。

 例えば、3月に行われたスペイン代表とのテストマッチ。レーブ監督は[4-2-3-1]の布陣を選択。1トップにティモ・ヴェルナー、2列目にはユリアン・ドラクスラー、メスト・エジル、トーマス・ミュラー、ダブルボランチの一角にはサミ・ケディラを配置。試合中に連続した攻守の切り替えに耐えうるフィジカルに長けた選手たちを揃えた。ポゼッションを大切にしながらも、ボール奪取時には前への素早い切り替えから、縦に縦に繋ぎ、ヴェルナーを先鋒にスペインのゴールに迫った。

 ドイツ代表には、ポゼッション型だけでなく、状況に応じてカウンター型を選択する柔軟性がある。往年のボルシア・ドルトムントや近年のRBライプツィヒのように、プレッシング、ゲーゲンプレッシングでボールを奪い、カウンターで一気呵成に敵のゴールを陥れる。

 ショートパスを主体とするポゼッションに囚われない。そもそも10年の南アフリカワールドカップでは、高速カウンターを武器にしていた。ボール奪取時に繋ぐことを意識するばかりでは、敵のプレッシングの餌食になり、カウンターを食らって被弾する恐れもある。トーナメントが順当に進めば、準決勝ではスペイン代表、決勝ではブラジル代表が待ち受ける。同じく優勝候補の両チームは、不用意なボールロストを決して見逃さないだろう。

 何より準決勝に辿り着く前に力を使い果たさないために、カウンターで行けるところは行ってゴールを奪い、効率良く勝ち進むことは重要になる。チーム全体の意思統一を徹底し、高い次元でポゼッションとカウンターを併用していくことが、W杯連覇のカギとなるはずだ。

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