アイスランド代表のGKハルドールソンは映像監督としての顔も持つ“二刀流”【写真:Getty Images】
現地時間16日、ロシアワールドカップのグループリーグ初戦でアイスランド代表がアルゼンチン代表と1-1で引き分けた。
アイスランドにとってワールドカップデビュー戦となったこの試合。その戦いぶりはベスト8に躍進した2年前のEUROで見せたような、粘り強さがあった。アルゼンチンに26本のシュートを浴びながら1失点に収めて、歴史的な勝ち点1を獲得している。
そして最も目立つ活躍を見せたのはアイスランドの守護神ハンネス・ハルドールソンである。64分にアルゼンチンの絶対的支柱リオネル・メッシのPKを見事に止め、母国を敗戦の危機から救った。EUROに続いて大舞台に立った34歳のベテランが大仕事をやってのけた。
2011年にアイスランド代表デビューを飾ったハルドールソンは、スター街道を歩んできたメッシとは対照的な超苦労人である。人口30万人の母国において、国内リーグでプレーしているだけでは生計が立てられない。アイスランドリーグは特殊な気候などの理由もあって5月開幕、9月閉幕という短期間かつ変則的なスケジュールで開催されている。
そのため彼はサッカー選手と並行して映像ディレクターとしても仕事をしていた。それは30歳になった2014年夏にノルウェーのクラブへ移籍して本格的にプロ選手としてプレーし始めるまで続いていたという。
そんな彼は、母国にとって初めてのワールドカップ出場に向けて、アイスランド国内で放送されるコカ・コーラ社のテレビコマーシャルを制作した。“本業”の映像ディレクターとして監督した1分42秒の映像には、レジェンドのエイドゥル・グジョンセン氏や現役の代表選手ら多くの有名人が出演し、アイスランド代表やそのサポーターの代名詞となった「バイキング・クラップ」をフィーチャリングしている。終始にじみ出る高揚感は鳥肌ものだ。
このテレビコマーシャルはYouTube上で公開されており、ハルドールソンが「監督」として出演するメイキング映像も見ることができる。その中で彼は自らのキャリアについて「サッカー選手と映像制作者の両方をやることが、かなり変だというのはわかっている。でもそれらはサッカー選手としてキャリアを終える前からある、僕の人生をかけた情熱なんだ。僕は同時に2つのプロフェッショナルとして働くことができて幸運だと思う」と語っている。
映像ディレクターとサッカー選手という2つの顔を持ったハルドールソン。最初で最後になるかもしれない世界の舞台で、サッカー界の歴史に残る“映像”を残せるだろうか。アイスランドの躍進は、この守護神の腕にかかっているかもしれない。
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