フランスを救ったもう1つのテクノロジー
フランスはもう1つ、この試合でテクノロジーに救われた。先制した直後にサミュエル・ウンティティがペナルティエリア内でハンドを犯しPK献上。オーストラリアに追いつかれていたが、最終的に2-1で勝利できたのは「ゴールラインテクノロジー」のおかげと言える。
選手交代でナビル・フェキル、オリビエ・ジルー、ブレーズ・マテュイディを投入して流れを引き戻したフランスは80分、試合を決める1点を手にした。中盤で前を向いたポグバは、ムバッペとのワンツーで前進し、さらにジルーにボールを預ける。
ポストプレーの名手ジルーは相手DFを引きつけながら、ポグバに絶好のパスを返す。先制の起点にもなっていた背番号6は、GKの頭上を抜けるループシュートを放ち、ゴールネットこそ揺らさなかったものの得点が認められた。
今では主審の手元の機器が振動してボールがゴールラインを完全に越えたことがわかるようになっているが、このゴールラインテクノロジーがなければ「ノーゴール」と判定されていてもおかしくなかった。ゴール後に示された判定CGで、ボールはよく目を凝らさなければわからないほどわずかにゴールラインを越えていた。
ゴールポストの太さは12cmあり、ゴールラインテクノロジーなしではゴールと平行に見ている副審が判定を間違えていてもおかしくない。2010年の南アフリカワールドカップでイングランド代表のフランク・ランパードのゴールが認められず、後で実はゴールだったことが明らかになったが、8年越しで同じようなミスが起きていた可能性もあった。
フランスの2つのゴールと勝利は最新テクノロジーによってもたらされた。試合後の記者会見ではディディエ・デシャン監督も「ファウルがあったがレフェリーは見ていなかった。ビデオを見直してミスを訂正することができた。VARがあれば、こういうことがよりやりやすくなる。今は色々と学んでいるところであり、慣れていかなければならない」とVAR導入の成果を強調した。
ピッチ内へのテクノロジーの導入にはサッカーにおける人間味が失われる、無機質さが競技の魅力を損なうという批判もあったが、「VAR」や「ゴールラインテクノロジー」はワールドカップでサッカーという競技の進行をスムーズにし、より正確な判定を下すことにも大きく貢献している。今後それらがどのような”活躍”を見せるか注目が集まりそうだ。
(文:舩木渉)
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