VARがもたらした正確な判定と納得感
スペイン戦でもフランス戦でも、VAR適用がストレスフリーだったことには驚いた。これまでは「試合の流れが止まる」という点が指摘されていたが、そもそも試合が止まるべき場面でしかVARは動かず、スタジアムに主審が見ているものと同じ映像が流されるので、判定基準が明瞭で観客にもわかりやすい。
さらにテニスなどで導入されている「チャレンジ制度」とは違って選手や監督にVARの適用を要求する権限はないため、無駄な諍いを生まずに済む。実際、VARにサポートされた判定に選手や監督が意義を唱える姿はほとんど見られない。
数々の現場でVARが試験導入された際の膨大なデータが分析され、「VAR適用はおおよそ3試合に一度」「VARを使用して判定が覆らなかったケースは10~15%ほどしかない」「明らかな間違いに対する判定の精度は約99%まで向上」「VARを1回使用することによる試合遅延は平均55秒で、セットプレーや交代によって失う時間よりも短い」という結果が出ている。
そういったこれまでのデータの蓄積をもとにすれば、VARが適用されるケースではほとんどの場合で審判にミスや見逃しがあり、判定が覆る場面で使用されること、「プレーの連続性・時間が失われる」という指摘も誤りであることがわかる。今のところVARによる納得感は多くの疑問を上回るものがある。
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