ついに輝きを放ったW杯。その姿はかつてのウインガーではなく
同点とされた44分にペナルティアークから左足で放ったシュートは、力強い威力を帯びてGKダビド・デ・ヘアの手を弾いてゴールへ。これはデ・ヘアのエラーとされるはず。しかし、デ・ヘアでも防げないシュートは世界中のどのGKでも防げないはず。
さらにジエゴ・コスタとナチョのゴールで1点のビハインドを背負った88分には自ら得たFKの場面で壁に入ったブスケッツの頭上を越えつつ、ゴール右隅へと突き刺さる最高級のシュートを繰り出してハットトリックを達成した。
データサイト『Who Scored』のレーティングでも9.8点を記録し、FIFA公式でも文句無しのMOMに選出された。
クリスティアーノ・ロナウドといえば、快速と力強いドリブルが武器のウインガーとして名を馳せたが、この試合で記録したドリブル突破回数はゼロ。その一方で、シュート4本中枠内3本で3得点を挙げ、空中戦では両チーム最多となる5回の勝利を記録するなど、よりストライカーとしての能力を発揮している。
以前より、所属するレアル・マドリーでもポルトガル代表でも、その圧倒的な得点能力の高さからセンターFWで起用される機会はあったが、今ひとつ力を発揮できない時期もあった。しかし、ここ数シーズンはレアル・マドリーでもセンターFWとして機能する姿を見せている。
33歳となった今、クリスティアーノ・ロナウドは選手として新たなステージに入った。若くしてスターとなったアタッカーは、早熟に終わるパターンも少なくはないが、ロナウドは自らのスタイルを変化させつつ、10年以上もの長い年月にわたって世界最高峰であり続けている。
そして、これまで決してその力を発揮したとは言えないワールドカップおいて“第2形態”となった今大会、獲得すべき最後のタイトルに最も近づいているといえるだろう。
(文:海老沢純一)
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