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大迫勇也の価値と課題。『2秒』を生み出す図抜けた能力、決定機で揺れないゴールネット【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

マグロ漁船の漁師

 シュートが決まるエリアはペナルティーエリア内のゴールエリア幅だ。この場所からのシュートと他の場所からでは、得点になる確率が全然違う。つまり、このエリアに人とボールを送り込むことが攻撃の第一目標になるわけだ。スルーパスでもドリブルでもクロスボールでもいいが、とにかくこのエリアからのシュートを目指すことになる。

 このエリアへ入る機会が最も多いのは通常CFであり、決定機にシュートする機会も自ずと多くなる。大迫もこのエリアへ入りシュートしている。当然、守備側も最大限に警戒しているので簡単に得点できる状況ではないわけだが、ここでのチャンスを決めるかどうかは勝敗の分岐点になりうる。その点で大迫の責任は重大だ。

 ただ、量産型のストライカーはあまり責任を感じているようには見えないのが面白いところだ。もちろん外せば悔しがるが、たいがいさっさと切り替えている。ヘラヘラしている選手すらいる。

「外してしまった」と下を向くより、「これなら次もあるだろ」と気楽に構えている。「ストライカーはマグロ漁船の漁師みたいなもの」と言った人もいる。「ケチャップみたいに出るときは出る」とも言われる。そういうメンタルのストライカーは、何回外しても毎回「絶対決める」と思っているから不思議なものだ。

 絶対決めると思って外しているのに、次もそう思っている。得点を量産するFWは、実は外している数も多い。どんどん打って外すが、そのうち何本かが決まる。そういう性質の仕事なのだろう。

 前線で2秒のタメを作れる大迫は日本代表にとって貴重だが、さらに決定的な存在であることを示せれば、日本は勝利に近づくはずだ。

(文:西部謙司)

【了】

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