優勝候補だが、一枚岩になれなければ・・・
ノルマ:ベスト16
目標:優勝
スペインは、苦い経験を糧にパワーアップした。時代の流れに逆らわず、しかし迎合することなく前進している。
10年前、スペインは一時代を築いた。シャビ、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバによるクアトロ・フゴーネス(4人の創造主)を擁したチームはEURO2008で優勝し、伝説となった。
そして、2010年南アフリカワールドカップでも頂点に立つ。その2年後のEURO2012は大会連覇を果たし、最強の名声を独り占めした。
主体的にボールを動かしゴールに迫る“ティキタカ”で相手を圧倒。警戒が強まれば強まるほど、面白いように網を破ってみせる。技術に長けた選手たちの共演は観る者を魅了し、踊るように世界の頂点へと駆け上がっていった。
だが、栄光は永遠には続かない。2014年、ワールドカップ連覇を目指して意気揚々とブラジルに乗り込んだスペイン代表は、進化したフットボールに飲み込まれ、グループリーグ敗退を余儀なくされた。
この大会のトレンドは平たく言えば堅守速攻。パワーとスピード、合理性を融合したスタイルにスペインは成す術がなかった。ブラジルの地には、優雅に踊る舞台など用意されていなかった。続くEURO2016では決勝トーナメントに駒を進めたものの、ベスト16に終わっている。
それでも、光が差し込むのも早かった。ロペテギの監督就任を機に、スペインは再び立ち上がった。イスコ、コケといった面々をチームに加え、新陳代謝を図るとチームは復活。“ティキタカ”というアイデンティティはそのままに、より隙のない集団へと変貌を遂げた。
ロシアワールドカップ・ヨーロッパ予選ではイタリアと同組となったが、スペインにとっては問題ではなく、9勝1分と危なげなく本大会へのチケットを手にした。
2018年、ワールドカップイヤーを迎えても強さはそのまま。慢心も見られず、アルゼンチンとの親善試合では6-1と躍動した。ロシアの地で2大会ぶりの優勝を目指すスペインだが、頂点に最も近いチームの一つと言えるだろう。
世界最高レベルの陣容を誇るのは間違いない。GKのダビド・デ・ヘアの守るゴールは簡単には割れないだろう。セルヒオ・ラモスとピケのセンターバックも強固で巧みだ。
ヴィッセル神戸への加入が決まっているイニエスタはスペイン代表でのキャリアの集大成を迎える。今夏から世界一の選手をJリーグで見られる。夢のような話だ。
イスコはこのチームの象徴的存在で、現代サッカーに適応したファンタジスタ。速攻で力を発揮するジエゴ・コスタはチームのアクセントとなる。ブラジル大会では完全に組み込めずに足枷になっていたが、4年の時を経てラ・ロハの頼れるストライカーとなった。彼がいることで、攻撃のバリエーションと速さを手にした。
実力的には優勝候補の一角だが、監督解任によるカオスにどう立ち向かうかが重要になる。イエロ新監督のもと一枚岩になれなければ、あっけない結末も覚悟しなければならない。
(文:編集部)
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