衝撃が走った初戦2日前の監督解任。舞台裏では何があったのか
優勝候補の一角と目されてロシアワールドカップに乗り込んできたスペイン代表は、突如として劇的な状況に置かれることになった。フレン・ロペテギにより形作られた代表チームは、そのロペテギの解任という直撃ミサイルに揺るがされている。
疑問が尽きることはない。だがスペイサッカー連盟のルイス・マヌエル・ルビアレス会長に与えられた選択肢が限られていたのは確かだ。スペインサッカー界のトップに就任してわずか3週間の会長は、連盟のイメージを極度に貧弱なものとするような状況を見過ごすわけにはいかなかった。
すでにレアル・マドリーと交渉が行われていたこと、5月22日にサインが交わされた2020年までの契約延長がロシアワールドカップ以降には無意味となることは把握していたが、マドリーから就任が公表されたという事実がルビアレスの怒りを爆発させた。
会長はFIFA総会に出席するためモスクワを訪れていたが、それをキャンセルして急遽スペイン代表が合宿を張るクラスノダールへと戻ってきた。その頭の中では、ポルトガルと対戦するスペイン代表のベンチにロペテギが座ることはないという考えが固まっていた。モスクワで間もなくボールが転がり始めようとするその時に裏切られ、背後から殴打されたと感じていた。クラスノダールに舞い戻ったルビアレスの第一声は「我々は責任をもって行動する」だった。
非常に困難で厄介な決断ではあったが、たとえ選手たちが監督を支持しようとも、ルビアレスはその決断を下さなければならなかった。ロペテギは20試合を戦って一度も敗れることなくチームを去る。これは4試合以上で指揮を執ったスペイン代表監督としては歴史上初めての記録だ。結果がこの逆だったとすれば、いかなる動乱や横暴の呼び水となっていてもおかしくはなかったかもしれない。
ルビアレスは意志を曲げることなく、ロペテギにとって最後の砦となった選手たちからの解任反対をも撥ねつけた。キャプテンのセルヒオ・ラモス、アンドレス・イニエスタ、ダビド・シルバ、その他の重鎮であるジェラール・ピケ、セルヒオ・ブスケッツ、ホセ・マヌエル・レイナらは、主役である選手たちの姿勢を会長に説明した。
クラスノダールの宿舎で行われたルビアレス、ロペテギ、フェルナンド・イエロの三者による最初の会合は13日の早朝5時まで及び、朝8時から再開された2度目の会合には重鎮選手らも召喚され、最終的に解任に至った。