溝が長くなったもう1つのメリット
溝が長くなったメリットがもう1つある。回転がよりかかりやすくなるのだ。それは、ボールは溝が長くなるほど空気を巻き込むようになるためだ。
以上のポイントを踏まえ、テルスターの性質に合ったキッカーを訪ねると浅井教授は遠藤選手にタイプが近い「柴崎選手が適している」と答えたのだ。
ただし、ゴールからの距離が離れたFKとなると話は変わる。溝が長くなりトリッキーな動きが抑えられたテルスターとはいえ、無回転のボールに向かないわけではない。
浅井教授は「テルスターも無回転でブレたり、落ちる性質は持っている。コースが変化してから移動距離が短くなりトリッキーさが抑えられたとはいえ、ボールが変化する回数は変わらない」と話す。そしてテルスターには浅井教授らが研究で明らかにしたテルスターの長所、安定性がある。
教授らがキックロボットを使い、無回転のボールを蹴って調べたところ、ジャブラニに比べてテルスターは蹴るボール面が変わってもボールの着地点のばらつきが少なく安定していた。つまり、テルスターは正確な無回転キックを蹴りやすいボールなのだ。
ボールを蹴ったときのエネルギーは主に、前に進む推進力と回転する力の2つ分かれて消費される。回転するボールは回転にエネルギーが使われ、その分推進力は低下する。無回転ならエネルギーが回転に奪われない分、ボールに威力が出やすい。テルスターは不規則な動きが小さくなったとはいえ、ブレる回数は変わらず、威力のある正確な無回転ボールが蹴りやすいボールと言える。
そのため、浅井教授はゴールから距離のあるFKのキッカーにはキック力があり、無回転ボールの蹴れるこの人の名前を挙げた。
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