異国で成熟した2人、ロシアで集大成へ
2度、不条理を乗り越えた。だからなのか、泰然自若としている。
ドルトムントを離れて辿り着いたボルフスブルクは、都会の喧騒はおろか、田舎の情緒とも無縁だ。フォルクスワーゲンの巨大な工場と4本の煙突だけが存在感を放つ、無味乾燥の街。
しかし、クーバは「とても幸せだ」と言う。
「なぜならここでは多くのものを必要としない。あるのは家族、自宅、子供の遊び場、そして僕のためのフットボール」
余分なものが一切ないシンプルな生活。今年の12月には33歳になる。キャリアの晩年に差し掛かって訪れた平穏。“クーバ”も、旧友のそれと形は違えど、自分だけの幸せをようやく手に入れたのだ。
クロップ体制の黄金期を支えた2人のポーランド代表。いよいよ選手人生の集大成となるロシアW杯に向かう。
全盛期に比べれば、衰えは否めないかもしれない。しかし、若さと引き換えにしか手にできないものがある。若さを乗り越えてこそ辿り着ける境地がある。
異国で成熟したピシュチェクとブワシュチコフスキ。「本当に本当のエモーショナルな瞬間」が、ロシアの大地で待っている。
(取材・文:本田千尋【ドイツ】)
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