アシスタントコーチに就任した人物
「彼は代表選手のマネジメントに非常に気を遣っている。新聞社やテレビのカメラ、またファンの殺到を避けて、選手たちが落ち着いて練習に集中できる場所を望んだ。それこそがペケルマン・スタイルだ」と地元記者の一人は言った。
母国コロンビアからは連日TV、ラジオのクルーが合計で15名ほど詰めていた。彼らについては毎日2名の選手が取材対応を行い、日本代表のように毎日の練習後に囲み取材が許されるという環境ではなかった。
当然練習は完全な非公開か、TVの映像素材用として練習の一部を15分程度開放するだけだった。つまり、戦術に関するところはこの合宿中一切見せなかった。紅白戦や試合形式のポジション確認などもってのほか、戦術的な要素を落とし込んだメニューも全て隠した。
こういう環境にコロンビアの選手たちは、とても好意的だった。「世間の喧騒から隔離されているというこの環境がいい。広いし時間もゆったりしているし、サッカーに集中できるのがとても大事なことだ。ここで練習している限り、僕たちがどんな戦術を準備しているのか、誰もうかがい知ることはできない。秘密を守れる場所があるから、ミランというクラブも成功してきたんだろうね」。主将のファルカオは語っていた。
さらにペケルマン監督は、グループをさらにソリッドなものにするための”助っ人”まで呼んだ。それが、元アルゼンチン代表MFのエステバン・カンビアッソ氏のアシスタントコーチ就任だ。
公開された練習部分でも、選手たちに近づいて動きのアドバイスを送っていた。11日には最後のミニゲームが公開になっていたが、カンビアッソはその中に加わっていた。現役時代さながらに周囲へ指示を送り、またアグレッシブにボールを奪っていた。ペケルマンのかつての教え子である世界的な元名選手を呼び寄せ、プライドも高いであろうベテラン選手をさらに伸ばせるような体制を作ってしまったことは、敵国の立場から見ればなんとも悩ましかった。
ともかくコロンビアの選手と接触し、彼らの”今”について知ろうとすれば、その手掛かりはコメントだけ。ただその中からはいくつか、示唆に富む言質を得ることができ
た。