日本代表ではエイバルでの経験がそのまま生きる
格上のクラブからオファーが届いた選手をブロックする財力はエイバルにはない。というより、もともと育てた選手は売るつもりなのだ。
やや旧式の4-4-2は、一芸に秀でた選手を完成品にするための教育システムとして適している。かつてはフランスのオセールが4-3-3の育成システムを使っていた。守備がマンツーマンなので誤魔化しがきかず、そのぶん選手が鍛えられていった。90年代のオセールは一貫した旧式システムで多くのスターの卵を孵化させ高値で売って経営を成立させていた。
現在はゾーンで区割りのはっきりした4-4-2が育成システムになっている。ASモナコ、RBライプツィヒ、シャフタール・ドネツクなど、選手の引き抜きを想定してシステムはシンプルな形にして、その中で選手を完成品にしていく。
ロシアワールドカップに臨む日本代表は、リーガ・エスパニョーラでいえばバルセロナやレアルではなく、エイバルに近い立場である。組織的な守備からのショートカウンターという戦い方になりそうだ。
パラグアイとの最後の強化試合、乾は2ゴールで西野監督に初勝利をプレゼントした。守備面での貢献も見逃せない。ゾーンを抑えるか、ハイプレスに切り替えるか、スイッチ役はエイバルでの経験がそのまま生きていた。キーマンの1人になるかもしれない。
(文:西部謙司)
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