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乾貴士がエイバルで重宝された背景。誤魔化し利かぬシステムで進化、日本のキーマンが“完成品”になるまで【西部の目】

 12日の親善試合・パラグアイ戦で日本を勝利に導いた乾貴士。スペインのエイバルでは攻撃的な能力を遺憾なく発揮するだけでなく、新たな力も身につけた。予算規模の小さいこのクラブではスペシャリストとしての働きが求められ、適応することで不可欠な選手となった。エイバルでの経験は、ワールドカップに臨む西野ジャパンでも必ず生きる。乾は日本のキーマンである。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

乾が所属したエイバルというチーム

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エイバルで成長を遂げた乾貴士【写真:Getty Images】

 リーガ・エスパニョーラのSDエイバルは小クラブというより零細クラブだ。ホームスタジアムのイプルーアの収容人数はわずか5000人程度。レアル・マドリーやバルセロナとは比較にならず、その他のクラブと比べてもかなり規模が小さい。しかし2017/18シーズンの最終順位は9位だった。一時はEL圏内まで食い込んでいた。

 エイバルは身の丈に合った戦い方をしている。コンパクトな4-4-2は1990年代のスタイル。後方からのビルドアップはやらないし、中盤を経由するパスワークすらあまり使わない。カッチリした4-4-2のままポジションの流動性もない。

 メンディリバル監督が古くさいスタイルを徹底させていた理由の1つは、おそらくスタジアムの狭さだと思う。スタンドが小さいだけでなくフィールドも少し狭い。狭いのでプレスが効きやすい。ビルドアップはやりにくいが、エイバルはあまり中盤でパスをつなぐつもりがないからマイナスにならない。無理してつなぐぐらいなら、DFへ下げてロングボールを前線へ蹴っている。これも狭いので確実に届く。

 もう1つの理由は予算。ビッグクラブは言うに及ばす、中堅規模ほどの補強資金にも恵まれていない。どんなシステムにも対応できるような選手を集めるのは難しい。そこで各ポジションのスペシャリストを集め、各ポジションで役割を全うしてくれれば機能するようなチームを作った。乾貴士もその1人だった。

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