ワールドカップへのラストチャンスを生かせるか
ただ、トップ下には守備で大きな負担も求められてくる。スイス戦では本田や宇佐美貴史の運動量が不足していて、最前線からボールを追いにいった大迫が完全に孤立してしまった。そうならないように香川は岡崎らをサポートし、高い位置でボールを奪えるように連動して動かなければならない。
2月2日のケルン戦以降、フル出場していない背番号10の体力が90分持つのかは分からないが、その部分もパラグアイ戦が重要な試金石になる。本田からポジションを奪うのか、それとも本人が「(2014年ブラジルワールドカップ初戦で流れをガラリと変えたコートジボワールのディディエ・)ドログバになる」と言っているように影響力あるジョーカーと位置づけられるのか。パラグアイ戦の一挙手一投足が大きな分岐点になるのは紛れもない事実だ。
「より相手が嫌がるようなプレスを僕たちがもっとかけていかなきゃいけない。そのスイッチは俺とオカちゃん(岡崎)がかけていきたい。どんどん汗をかいてやらないといけない。後ろが『ハマらなかったらいい』と考えていたら一歩一歩遅れる。そのマインドを僕は消したいし、いくならみんながいい距離で徹底してプレッシングにいく。それは可能じゃないかと思います」と本人は10年間の代表キャリアを賭けてハードワークする覚悟を持っている。
「選手であれば、スタメンを狙うのは当たり前。ハッキリ言って失うものは何もない。チームも個人も(批判を)言われ切ったと思ってるんで、恐れはない。あとは上に変えていくだけ。僕はすごい前向きで、ホントに楽しみですね」と何か吹っ切れたような明るさを見せた香川。
それがカラ元気ではなく、本当の意味での前向きさであれば、悲運の10番のレッテルをはがすことができるかもしれない。
(取材・文:元川悦子【ゼーフェルト】)
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