守備でもゴール前は「決定力」で片付けるべきでない
もちろんそのためにはサイドバックの存在も重要です。例えばスイス戦の1失点目のPKにつながったファウルを与える直前、日本の右サイドを簡単に縦に抜かれてしまいました。ああいった場面で、酒井高徳選手は相手が中に入る動きを消すべきなのか、縦に突破されない立ち位置をとるのかといった判断基準をチームとして設けるべきでしょう。
ブレール・エンボロに簡単に入れ替わられてしまった場面では、明らかに縦に突破される方が日本にとってリスクの高い選択肢でした。チーム全体が右にスライドできていれば、縦方向を消して中に誘導することで、その突破をボランチがカバーできます。
逆に縦に突破されてしまうと、センターバックが中央の自分のポジションから外れてサイドをカバーしなければならないので、なかなか間に合わず後手の対応になってしまいます。ゴール前も手薄になりますし、判断の遅れが決定的なピンチを招いてしまうのです。
4バックに戻したことで、日本は非常にオーソドックスなチームになってしまいました。相手からすればコントロールしやすいチームとも言えます。それを西野監督がどう捉えているかが重要だと思います。
ここまでの戦いから見ると、ワールドカップ本番で勝つためにはある程度「奇策」と言える戦い方も必要になるかとは思いますが、それ以前に最後の局面でリスクを管理するディフェンスラインとGKも含めた連係の問題を改善する必要があります。
コロンビア戦まで残された時間はわずかですが、まずはゴール前での現象を「決定力」という言葉で片付けるべきではありません。日本の選手が今のレベルでワールドカップに臨み、どうやって守って、どうやってゴールを奪っていくのかという基準をしっかり提示し、具体的な解決策を試合の中で表現できるようにしてほしいと思います。
「決定力」という言葉で終わってしまえば選手たちへのプレッシャーにもなってしまいます。ゴール前のラスト3分の1では何をすべきか、もう少し攻守両面において明確な判断基準を設けて戦うべきではないでしょうか。
(分析:岩政大樹、構成:編集部)
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