歴代最高のGKが直々に指名
「ユーベに行けば、ブッフォンの控えとなることは間違いない。そうなると出場機会は阻まれ、ひいては代表の座を失うことになる」。シュチェスニーがユーベ移籍を決めた1年前、懸念がボーランドのメディアの間では存在したという。
ただ1年を経て、そうなってはいない。出場機会をブッフォンと分け合いながら、素晴らしい成績を残した。出場21試合中10失点、そのうち実に14試合を無失点に抑えた。失点率は0.476と、実はブッフォンよりも良い数字なのだ(同0.824)。
ビッグセーブもするが、ポカも多いーーそれはもはや、過去の姿だ。マッシミリアーノ・アッレグリ監督は「ブッフォンの後継者」と指名し、またブッフォンも直々に「自分の後継は彼だ」と語っている。
ローマ時代に彼を指導したナンニGKコーチは昨年12月、トゥットスポルトのインタビューに対して「シュチェスニーは必ず国際レベルで指折りのGKになる」と太鼓判を押していたが、まさにそんな存在となった。ロシアW杯は、その力を証明するもう一つの舞台となり得るだろう。
明るい性格で知られ、クラブが運営する「ローマTV」では自分のコーナーまで持ち、チームメイト相手に軽妙なトークショーも展開していた。
現在28歳、精神的にも落ち着きを経て、チームリーダーの一人としてW杯に臨むことになる。その彼を焦らせ、シュートをねじこむのは、どんなFWにとっても難しい作業となっている。
もはや、隙を作ってくれることを期待はできない。ラダメル・ファルカオやサディオ・マネらを前に集中力を研ぎ澄まし、ポーランドゴールを守るであろう彼を、日本代表のFWは脅かすことができるのだろうか。
(取材・文:神尾光臣【イタリア】)
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