パラグアイ戦をいかに使うかがW杯を左右する
このアプローチにはどうしても違和感が拭えない。日本代表はすでにハビエル・アギーレ体制の半年間、ハリルホジッチ体制の3年間を失っている。最初から準備期間は4週間しかないことは西野監督も分かっていたはずだ。この期に及んで、選手たちに「臨機応変さ」や「柔軟な対応力」を求めたところで、個々の戸惑いや不安が増えるだけではないか。
メンバーについても、ガーナ戦とスイス戦は2人を入れ替えただけだったが、12日のパラグアイ戦は「ワールドカップの長い期間を固定した11人プラスアルファで戦えるとは思っていないので、今、バックアップでトレーニングしている選手たちに入ってもらおうと思っている」と発言していて、それも賛否両論が渦巻いている。
長谷部は「考え方としては、そこまでチャンスがない選手が(インパクトを)見せれば、化学反応が起きるかもしれない」と指揮官のやり方を支持したが、1試合しかない最終テストの場を使ってスイス戦で出た課題を修正しないままロシアに入っていいのだろうか。しかも9日のトレーニングをオフにして、リフレッシュを優先するというのだから、本当に大丈夫かと言いたくなる。それは近くで取材している我々報道陣だけではないはずだ。
いずれにしても、ロシアでミラクルを起こしたければ、できるだけ早くチームの戦い方を一本化し、チーム編成も固定していくべきだ。短期間でも主力の連係やコンビネーションを成熟させ、ボールの奪いどころはどこなのか、いつラインを下げてブロックを作るかといった約束事をハッキリさせた方がチームとして1つの方向を向きやすいはずだ。2010年南アフリカワールドカップの日本代表はそのやり方で成功ロードを歩んだ。その事実を長谷部や本田ら当時を知る選手から西野監督に伝えることはできないだろうか。
パラグアイ戦をどう有効に活用するのか。それしだいでコロンビア戦の成否が決まると言っても過言ではない。そのくらい重要性の高い最後のテストマッチをどう使うのか。西野監督には今一度、方向性を再考してほしいものである。
(取材・文:元川悦子【ルガーノ】)
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