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日本代表、W杯に漂う絶望と悲壮感。攻守ともにズタボロ…希望なきスイス戦の完敗

text by 編集部 photo by Getty Images

西野朗
西野朗監督率いる日本代表が進む先に待ち受けるものは…【写真:Getty Images】

 日本代表は現地時間8日、スイス代表と対戦して0-2で敗れた。

 FIFAランキング61位の日本に対し、スイスは6位。当然のことながら大きな実力差があると予想された中、その通りの試合となった。これで昨年12月の韓国戦に1-4で敗れてから5試合勝利なし、そして3連敗となった。

 ロシアワールドカップに向けた国内最後のテストマッチだった先月30日のガーナ戦で3バックを導入し、全く成果を残せず終わっていた日本代表。西野朗監督は欧州合宿に入ってから4バックのトレーニングを始め、スイス戦には慣れ親しんだ4-2-3-1で臨んだ。

 しかし、試合を終えて見えてきたのは0-2というスコア以上の絶望と悲壮感だった。

 日本は試合開始直後からスイスの強烈なプレッシャーに晒され、簡単にボールを失ってピンチを迎える場面が続いた。スイスがボールを持てばいとも簡単にチャンスを作られてしまう。象徴的だったのが4分のシーンである。

 右サイドバックのシュテファン・リヒトシュタイナーが投げたスローインを、グラニト・ジャカが中央で受ける。そこに対し大島僚太が遅れ気味に寄せていくが、逆に背後にスペースを作ってしまい、鋭い縦パスを通されてしまう。

 左サイドから中に絞っていたブレール・エンボロがジャカからのパスを受けると、長谷部誠の中途半端な寄せを剥がして右斜め前に進み、マリオ・ガブラノビッチとワンツーでパス交換してゴール前にスルーパスを入れる。GK川島永嗣が前に出て事なきを得たが、中盤から飛び出していたレモ・フロイラーが目の前まで詰めてきていた。

 日本はヴァイッド・ハリルホジッチ前監督の頃のように、マンマーク気味に守るのではなく、ボールの位置を基準にしてゾーンディフェンスを敷いているようだった。相手陣内でボールを失うと、4-2-3-1あるいは4-4-2に近いブロックを低めに敷いてスイスの攻撃を待ち受ける。

 だが、この守り方を見たスイスは弱点を見抜いて即座に対応してきた。ボランチのヴァロン・ベーラミかジャカがセンターバックの間に入ってビルドアップの起点を担うことで、自由に攻撃を組み立てられるようになり、日本の急所に対してパスを刺すことが容易になった。

 試合前からボールポゼッションを意識する発言を残していた西野監督が守備でどのような狙いを持っていたのか、終始不明瞭だった。ボールを追い込む位置は定まっていないように見え、前線の高い位置からプレスをかけるのか、あるいは一度ブロックを敷いて構えるのかが曖昧になるシーンも散見された。

 40分に1失点目につながるPKを与えたシーンも、ファウルを犯した吉田麻也よりも、リカルド・ロドリゲスから縦パスを受けたエンボロに入れ替わられてしまった酒井高徳の対応が軽率だったのは間違いなく、個々の判断にも迷いが見られた。

 攻撃も拙さが際立った。せっかく高い位置でボールを奪っても、スピードが上がらず決定機と呼べるものはほとんど作れなかった。スイスは日本戦で100%の力を出していないように見えたが、中央のスペースを消して要所はしっかり締めていた。

 ミドルシュートを打てる場面もあったとはいえ、その多くがGKロマン・ビュルキの正面に飛んでいたのは偶然ではない。スイスの守備陣は相手をサイドに追い込んでクロスを上げさせる、それが無理であれば中央でパスコースとシュートコースを消して対応するという、基本原則を90分間徹底していた。

 西野監督は試合後のインタビューで「変化が足りない」「決定力不足、それに尽きる」と話していたが、チームに「変化を与える」のは監督の仕事であり、そもそも「決定機」がなかったので「決定力」について議論できる状況ではないだろう。

 終盤の2失点目も、自分たちのコーナーキック直後の守備で中途半端な対応をしてしまったがために、簡単にゴール前まで運ばれてしまった。スイスはカウンターに移ると5人がゴールに向かって走り、人数の足りていない日本の守備を左右に揺さぶってマークをずらしたうえで、最もゴールに近い確実な選択肢であるハリス・セフェロビッチにフィニッシュさせるところまで、全て意図的に崩しきった。

 このようにワールドカップ本大会を前にしたコンディション調整のために100%の力を出さず、テストに徹していたスイスが、相手の状況を見ながら時間帯に応じてオーガナイズを変化させたのに対し、日本は「変化」をつけられず、攻守にチグハグなまま敗れた。

 ロシアワールドカップ初戦のコロンビア戦を想定したテストマッチは、残すところ1試合。現段階でコロンビアに善戦できるだけのイメージを描くことはできず、希望を抱くことは困難だ。サランスクの地で待ち受けているのは、我々が想像する以上の絶望かもしれない。

【了】

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