大迫をしのぐインパクトを残せるか
大迫の方は2度目のワールドカップの重圧をひしひし感じているのか、極端に口数が少なくなっているが、追う側の武藤はあくまで自然体。むしろ普段以上に清々しい様子でプレーしている。本人の中では「一度諦めかけたロシアが現実になったのだから、思い切ってやるだけ」といい意味の割り切りがあるのかもしれない。
その勢いに乗って、堅守のスイスからゴールを決め、パラグアイ戦でも連発するようなことがあれば、2人の序列がひっくり返る可能性もゼロではない。そんな一発逆転を武藤は虎視眈々と狙っているに違いない。
「やっぱり結果が全ての世界ですから、いいプレーができれば(本番で先発をつかむ)チャンスが巡ってくるかもしれない。ここにいるメンバーの誰しもがレギュラーで出たいと思っているし、自分もその1人ですし、FWである以上はゴールにつながる仕事をしないといけない。それが一番分かりやすいですから」と彼は目を輝かせた。
武藤の代表通算得点は2点。直近のゴールは2015年10月のイラン戦(テヘラン)まで2年半も遡らなければならない。その後、相次ぐひざの負傷やハリル前監督の冷遇などによってチャンス自体も与えられていなかったが、ここへきて急激な成長曲線を描いているのは確かだ。
マインツで格上相手の試合を数多く経験していて、スイス戦のような戦いに慣れていることも強みと言える。終始劣勢の中でも決して諦めることなくボールを追いかけるタフさとアグレッシブさ、いざとなれば自陣に引いて守備に参加する献身性も今季ドイツでは大いに光っていた。
それをスイス戦でしっかりと発揮し、大迫をしのぐ強烈なインパクトを残せば、12日後に迫った本番では何かが起きるかもしれない。
(取材・文:元川悦子【ルガーノ】)
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