頭に地図が入っている
プレーのアイデア、判断も素晴らしい。非常に頭のいい選手である。よく「考えてプレーしなさい」と指導者は言うが、実際のところ優れた選手にはあまり「考えている」という意識はない。一般的に「考える」は言語を使うけれども、サッカー選手の判断はそうではないからだろう。
サッカーの判断は自動車の運転と似ている。運転は認知→判断→実行の順に行われているけれども、ドライバーに判断しているという実感はあまりない。信号、標識、道路状況などを認知して速やかに実行している。サッカーの判断はそれと似ていて、見たものから反射的にプレーを選択していることが多い。
イニエスタは頭に地図が入っている選手だ。ナビゲーションシステム搭載。迷わず最適解を出し続ける。慣れた道を走るドライバーのように裏道も熟知している。これまでプレーしてきたバルセロナとJリーグでは見える景色が若干違うかもしれない。ただ、それもすぐにアジャストするだろう。ハンドルが右側か左側かの違いさえないかもしれない、イニエスタにとっては。
(文:西部謙司)
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