「11」を背負う宇佐美貴史。今こそ飛躍のとき
そして日本にとって6回目となるワールドカップでこの番号をつけることになったのが宇佐美。だが、当の本人にはこうした歴史には全く興味関心がないようだ。
「自分の新たな11番像? ないです。選択できるなら(クラブで馴染みのある)33とか39にしたかったです」と本人は涼しい顔で語っていた。
しかしながら、「自分のプレーや存在感は作り上げていきたい」という野心は少なからず胸に秘めている様子だ。
「左、真ん中、右でもそうですけど、技術をフルに生かして違いを作っていくとか、フィニッシュの流れを作っていくこと。チャンスを多く作る中で、それに絡んでいくことができればいいと思ってます」と宇佐美は言う。その延長線上にゴールという結果があれば、まさに理想的だろう。
思えば、20数年前の若かりし日のカズも「決めるべきところで決める」という仕事に集中し、結果を出し続けたことで、絶対的エースに君臨し続けることができた。1992年生まれの宇佐美は偉大な点取屋の全盛期を知らないだろうが、それを超える人間がいつかは出てこなければいけないのも事実だ。
宇佐美は2015年3月のウズベキスタン戦で初キャップを飾って以来、日本代表で22試合に出場しているが、まだ3得点にとどまっている。カズの55点には遠く及ばない。ただ、ワールドカップでゴールを奪って、日本躍進の原動力になれれば、背番号11の先輩を超えることができるかもしれない。
ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督と西野現監督の両方に寵愛を受け、「特別な才能がある」と言われ続けてきた26歳のアタッカーは眼前に広がるチャンスを掴みとらなければならない。
さしあたって勝負を賭けてほしいのは、8日のスイス戦。まだ3-4-3なのか4-2-3-1なのか、布陣はわからないが、どちらにしても宇佐美は左寄りの位置でプレーする。そこからどうフィニッシュに持ち込み、ゴール欠乏症を解決していくのか。今の彼は持てる力の全てをかけて、その命題を突き詰めていくべきだ。
(取材・文:元川悦子【ゼーフェルト】)
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