自らの意志に従い、セネガル代表を選択
ただ、モナコに来たことは、その面の改善でもプラスになっているようだ。それはレオナルド・ジャルディム監督が、入団時には『問題児襲来』とも騒がれたバルデを一貫して信頼し、擁護しているから。
「彼はとても優しい青年で、勤勉だ。それにとても良いスピリッツを持っている。彼に対してネガティブなことはひとつもない。彼はまだ若く、まだまだ伸びしろがある。常に上を目指して懸命に取り組んでいるよ。そんな彼に、我々もとても期待している」
バルデは言う。
「フットボール選手になるには、強い個性が必要だ。だから僕はここまで自分がしてきたすべての選択についてまったく後悔していない。18歳でプロになり、そしていま、自分に3000万ユーロを払ったビッグクラブに所属している。あのときバルセロナに戻っていたら、こうはなっていなかっただろう」
23歳という年齢で、サッカー人生のすべてにおいて、これほど強い意志をもって臨んでいる選手はそう多くない。
スペイン生まれの彼には、スペイン代表という選択肢もあったが、このときも彼は、「自分の体の中から答えが湧いてくるのを待ち」、その声に従ってセネガル代表入りを決意した。代表戦のグラウンドに初めて立った日(2016年3月26日)ほど感動的だった日は他にない、と彼は言う。
その彼が、初めて国を代表して戦うW杯で、発奮しないはずはない。彼の鋭いペネトレーションやシュート力は、この大会でも冴え渡ることだろう。
しかしケイタ・バルデという選手の怖さはそれだけではない。
子供のころから自分の意志で道を切り開き、そこから手に入れた確固たる自信。その意志と自信にあふれた大胆不敵なプレーこそが、この選手のもっとも恐るゝべき素質なのだ。
(取材・文:小川由紀子【フランス】)
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