通用せず混乱した「自分たちのサッカー」
そして、日本は6月14日の初戦・コートジボワール戦で本田の先制点を守り切れず、1-2で敗れた。特にディディエ・ドログバが出てきた時間帯はボールを回すどころか、奪うことさえままならず、一方的に押し込まれてズルズルと自陣に下がることしかできなかった。それは最終戦・コロンビア戦も同様だった。
「コロンビア戦が始まってみると、相手をつかみ切れなくて戸惑った。『パンパンパンパーン』みたいな素早いリズムのパス回しをされて、プレスが全然かけられないし、個人のテクニック、パススピードも仕掛けの速さも頭抜けていた。それに驚いてしまったし、目が慣れるのにいっぱいいっぱいだった。
僕がアドリアン・ラモス(グラナダ)を倒して先制されたのも痛かったけど、その前の時間帯から相手にペースを握られていた。コロンビアは優勝するだろうと思ったくらいです」と今野泰幸(G大阪)もレベル差に翻弄されたことを明かした。
結果的に日本は勝ち点1のグループ最下位に沈み、大きな屈辱を味わった。「ポゼッションサッカー」を標榜しながら、それができなかった時、彼らは修正する術を見出せなかった。
ラストピースとしてチームに加わった大久保は「4年間ずっとザックのチームで戦っていたメンバーは『ポゼッションサッカー』が自分たちのスタイルだと考えていたから、それができなくて混乱したのは確か。僕自身は南アでやったみたいに、しっかりしたブロックを組んでカウンターをする方が日本には合っていたと思う。
日本人はみんな走れるし、スピードがあるし、一体感を持って組織的に守るから。そういう話をコロンビア戦の前にみんなにしたけど、主力の多くが4年間やってきたことを変えようとはしなかった」と悔しさを吐露した。
ワールドカップで勝つためには、状況や相手に応じて戦い方を変えられる柔軟性と判断力が強く求められるが、4年前の日本代表にはそれが明らかに足りなかった。今回の西野ジャパンが1か月足らずの準備期間でその力を養えるとは思えないが、とにかく最低でもコンディションだけはベストに持っていく努力をしなければならない。
ブラジルの反省を生かさなければ、今の日本はもっとひどい結果を余儀なくされる可能性もあるのだから…。
(取材・文:元川悦子)
【了】