宇佐美貴史【写真:Getty Images】
日本代表は27日、千葉県内で今月30日の国際親善試合・ガーナ戦に向けて練習を行った。宇佐美貴史が新しいポジションへの難しさと期待感を語っている。
ロシアワールドカップを控えたこの合宿で日本代表は3バックを試している。攻撃は2シャドーの形で、その片方に宇佐美が試されているところだ。
宇佐美は新システムでの役割について「中ぎみで受けたり、サイドに張ることももちろんやっていいと思う」と解釈。「守備のところでだいたいのポジションというのがチームとしてしっかり浸透すれば、僕個人としてはすごくありがたいというか、やりやすいフォーメーションになる」と手応えを感じている。
サイドの守備は負担になり得るが、「ウイングバックと守備のときのイメージを共有できれば、行かずに済むときもある」と宇佐美。「行く・行かないをはっきりするところだったり、例えば左ウイングバックの選手が行くなら、僕はどこにポジションを取るのかというところですね。2人が見合ってどっちが行くんだってなって、ちょっと一瞬浮く瞬間とかが一番怖いかなと思う」と成熟の必要性を感じている。
「今日なんかやっていても、僕が逆側に入ったときに手薄になっているので、はめきったときに変えられないようにとか、そういうところがすごく大事。でもトライしたてなので、もちろんうまくいくわけがない。ポジティブに言うなら伸びしろしか残されていない。しっかり中で選手も話してたし、コミュニケーションを取れていることが一番大事かなと思いますけど」
まだ新システムに戸惑いはあるが、問題点が見えている分、課題は把握しやすい。宇佐美は「難しさは感じていますけど、最初やるときはだいたいそんなもんだと思っています」。「逆に最初に苦労しない方が怖いかなと思います。最初からうまくいきすぎる方が恐怖心がある。最初うまくいかない方が、あとは良くしていくだけなので。だから良くなっていけばという期待感とか、可能性だけを見て選手はやるべきだと思う。うまくいけば、どのポジションでもどういう状況でも数的優位をつくり出せるシステムだと思うので」と期待感を口にした。
宇佐美は今回の合宿でレギュラー組に入ることが多いが、西野朗監督の期待については「何も考えていないです」とのこと。「別にどうなるかなんて僕らには分からないことですし、特に自分は主力組に入っているとは感じていない。まずはワールドカップにいけるようにっていう考え方からスタートしているんで、練習でアピールしていくしかない立場」だとし、「いろんな選手としっかり合わせながらやっていくこととかはもちろん大事。合わせながらやれる器用さというか、そのへんは自分的にあると思っている」と、自身の強みを話した。
所属クラブが一緒の原口元気とのあうんの呼吸がある。宇佐美は「横にいることに関して違和感は全くないですし、生かし方とか生かされ方とかはチームで一番分かっているつもりで入る」と自信を持っている様子。原口と一緒にプレーするときは「距離を近めというよりは、自分がしっかりまず受けて元気君の走力と生かすとかっていうイメージです。逆に元気君がボールを持って仕掛けだしたらまあ1人2人ははがしてくるだろうっていうポジショニングの取り方っていうのはやりやすい」と、すでにイメージはできている。
現状ではポジション争いのライバルは本田圭佑や香川真司となりそうだ。ただ、宇佐美は特に意識していないという。
「ポジション争いはどこにでもあるものですし、焦りとかも特にない。ただ、勝っているような満足感も特にないし、もう自分にやれることは決まっている。気負ったからってプラスアルファで何か出ることは絶対ないし、自分はやれることだけやって、あとチョイスするのは監督なので」
チームとしてイメージしているのは、イタリアの強豪ユベントスのようだ。
「3バックでやると分かったときにユベントスとかって話は(出た)。相手にしたときにうまくやっていればすごくやりづらいっていうのは(イタリアでプレーしていた)圭佑君とか(長友)佑都君がすごく言っていたし。形にできれば間違いなく武器になるし、1つ武器を抱えて日本代表チームとしてワールドカップに行けることになる」
新しい戦術をワールドカップまでに武器と呼べるまでに鍛え上げられるか。日本代表にとっては一日一日が勝負の時間だ。
(取材:元川悦子、文・構成:編集部)
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