3バックにおける長谷部誠の重要性
5バックになれば、必然的に中盤や前線における味方の人数が減る。防戦一方の戦況を招きかねず、ワールドカップのレベルになれば、たとえ人数をかけて守っていても、守備網が決壊してゴールネットを揺らされるのは時間の問題となる。
だからこそ3バックが横方向へのスライドを絶えず繰り返し、存在感を示し続けることによって、左右のアウトサイドの選手が下がらない状況を作り出す。背後には頼れるストッパーがいると、中盤や前線の味方たちへ伝える意味でも、真ん中で長谷部が統率することで生まれる変化に槙野は声を弾ませた。
「初めて(一緒に3バックで)やりましたけど、所属クラブでも経験のある選手ですし、ラインの設定と指示のクオリティーの高さというものはプレーしていてすごく頼もしかったというのはあります。練習のなかでいろいろなバリエーションを増やし、さまざまな状況でのコンビネーションも高めていきたい」
2つ目は「デュエルで勝利すること」だ。ハリルホジッチ前監督がキーワードとして掲げていた、和訳すれば「1対1の決闘」となる「デュエル」を全面的に否定する必要はない。むしろ局面では率先して挑んだうえで、勝利しなければならないと槙野は覚悟を決めている。
「僕たちストッパーのところのマッチアップが、かなりポイントになると思っています。そこで相手の選手を潰すこと、自由にさせないことができれば日本の攻撃も活性化させられる。空中戦と地上戦における『デュエル』でしっかりと勝ち切り、ボールを奪う場面を増やしていければと思っています」
ハリルジャパンの発足時から常に名を連ねてきた槙野は、前指揮官に何度も突きつけられたダメ出しを愛のムチと受け止め、歯をくいしばりながら食らいついてきた。ハリルホジッチ前監督も、槙野の体に搭載されながらも、すべてが解き放たれていなかったフィジカルの強さを高く評価していた。
両者の思いが合致した結果が、30歳を超えてから遂げた槙野の覚醒と言ってもいい急成長であり、昨年10月から射止めたレギュラーの座となる。ハリルホジッチ前監督の解任を受けて、ロシアの地で『デュエル』を制し続けることが最大の恩返しになる、と力を込めたことがある。
「いままで育ててくださった方や、もちろん浦和でのプレーや指導者の方のおかげもありますけど、プレーの考え方も大きく変われたのは、ハリルさんの厳しい言葉があってこそだと思うので。感謝していますし、だからこそ一緒にワールドカップに、という思いはすごく強かったので」