ジダンのボレーを彷彿とさせるベイル
マネの同点ゴールによって、リバプールは再び流れを取り戻すかに思えたが、ジダン監督は61分にイスコに代えてベイルを投入した。この交代は試合を決める采配となり、マドリーとリバプールの力の差を明らかにするものなった。
ベイルは、交代直後の64分に左SBマルセロからのクロスをオーバーヘッドで合わせて勝ち越し点を奪う。完璧な弾道を描いたこのシュートは、かつてジネディーヌ・ジダンがレバークーゼンとのCL決勝で放った「史上最高に美しい」と称されるボレーシュートを思い起こさせるものだった。
さらに84分にはペナルティエルア外から無回転シュートを放つと、GKカリウスが処理を誤り3点目。23分間のプレーで試合を決めた。どれだけ戦略を練り、緻密なゲームプランを立てても、たった1人で全てを変えられる力を持つ選手は存在する。
対して、リバプールはサラーの交代によってララーナを前半のうちに投入してしまっていたため、後半のベンチに攻撃の切り札となる選手はいなかった。負傷中のアレックス・オクスレイド=チェンバレンがいれば、状況は異なるものだったかもしれないが、負傷もサッカーの一部。それを含めてチーム力という点でマドリーが数段上だったといえる結果となった。
さらに、チーム力という点でもう1つ大きな差があったのがGKだった。ロバプールのGKカリウスは、ドイツ出身の24歳。昨シーズンにクロップ監督によってマインツからリバプールへ引き抜かれたが、まだまだ不安定さが指摘されており、完全な守護神とは言えない評価となっている。そして、この大舞台で2度も失点に直結するミスを犯した。
結果的に、カリウスはこの舞台に立つレベルにはなかったと言えるだろう。とはいえ、まだ24歳。試合後、責任を感じて涙を流していたが、この涙が飛躍へのきっかけとなるのか、もしくは…。
今シーズンのCL決勝は、多くの涙とともにサッカー選手としてのキャリアにも影響を与える一戦となった。
(文:海老沢純一)
【了】