外国人枠撤廃は日本人枠導入とセットで考えるべき
その成果がともに昨年に開催されたU-17、U-20の両ワールドカップ制覇となる。特に前者で中心を担ったMFサンチョがドルトムントへ移籍するなど、十代の若手が国外へ飛び出すという、いままでにない流れを生み出している。若くして多様な文化を身につければ、それだけ将来の代表チームにも新たな力が還元されていくことになる。
何よりもロシア大会に臨むイングランド代表は、前回のブラジル大会後にデビューを果たした若手選手たちが中心を担っている。キャプテンに就任した24歳のFWハリー・ケイン(トッテナム・ホットスパー)や、3バックを統率する23歳のジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ)らを擁する新生イングランドはヨーロッパ予選を無敗で首位突破。その後の国際親善試合でもドイツ、ブラジル両代表と引き分けるなど、無敗のままロシア大会を迎えようとしている。
ドイツとイングランドを例に取れば、自国の選手、そして自国のリーグのレベルアップには外国人枠の撤廃だけでなく、アカデミーの育成方法の整備・充実がセットになっていることがわかる。
Jリーグでも創設時からアカデミー組織を傘下にもつことを義務づけているが、リーグ全体として若手をどのように育成していくのかという、土台となる普遍的な部分には明確なガイドラインが設定されていない。これには高体連との連携も必要になってくるだろうし、高卒ルーキーがJの舞台で出場機会に得られなくなる問題も根本的には解決されていない。
報道では来シーズンを含めた、ごく近い将来の撤廃へ向けて協議していくとされている。しかし、外国人枠だけが独り歩きしていけば、懸念されてきた通りに日本人選手の出場機会が奪われる事態を招きかねない。そうなれば将来的に本末転倒の状況を招くことになる。
一度は検討された日本人選手枠をセットで設け、そこにつながる育成年代の大改革をそれこそ日本サッカー界全体を挙げて、Jリーグがリーダーシップを取って検討していく時期に、1993年のスタートから次の四半世紀に向けて歩み始めたJリーグは直面している。
(取材・文:藤江直人)
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