日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ前監督【写真:Getty Images】
サッカー日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が、田嶋幸三・日本サッカー協会(JFA)会長とJFAを相手に、24日、東京地方裁判所に提訴した。
2015年3月に日本代表の監督に就任したハリルホジッチ氏。今年4月7日に突然契約を解除となり、その解任理由を同氏はJFAに求めていた。ハリルホジッチ氏側は質問状を送付して理由の提示を求めたが、JFAからは事実上の「ゼロ回答」となり、提訴に踏み切った。
原告のハリルホジッチ氏は被告である田嶋会長とJFAに対し、慰謝料1円と謝罪広告を求めている。田嶋会長は記者会見などで「コミュニケーションの問題」と解任理由を語っていたが、ハリルホジッチ氏は反論。具体的な証拠の提示がなく、「コミュニケーションに問題のある監督」というレッテルを貼られ、名誉毀損にあたるとしている。
提訴は、ハリルホジッチ氏にとって最終手段だった。同氏が記者会見を行った4月27日以降であっても誠意ある対応をとっていれば法的手段をとらなかったという。火に油を注いだのが、田嶋会長の「それで彼の気が晴れるなら」発言だ。
ハリルホジッチ氏の記者会見後、田嶋会長は都内で報道陣の取材に応じ、「それで彼の気が晴れるならそれでいいと思います」などと答えていた。報道によれば、「彼が頑張ってくれたことは評価しています」とも語っていたが、多くのサッカーファンから「誠意が感じられない」などと田嶋会長への批判が集まっていた。
訴状には、この発言が「提訴にいたる事情」の中に明記されている(編注:訴状には「気が済むなら」との記載だが、「気が晴れるなら」発言についてのもの)。ハリルホジッチ氏は一貫して誠意ある対応を望んでいたが、この発言ならびに一連の不誠実な対応に強い憤りを覚えたという。
発言直後にも思ったが、これは極めて不用意だった。せめてだんまりを決め込んだ方が良かったのではないか。現に、ハリルホジッチ氏の気は晴れるどころか、大嵐となっている。訴状が受理されれば、第1回口頭弁論期日は8月になるとハリルホジッチ氏の弁護士は見込んでいる。ロシアワールドカップの期間中、JFAと田嶋会長はその準備に追われることとなる。
(取材・文:植田路生)
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