「ここからが勝負。楽しめたら一番」
三竿に関しては直近の20日のベガルタ仙台戦でベンチ外になっていて、やや厳しい立場にある。クラブでの出場機会だけだと三竿と井手口という若い2人が外れることになってしまうが、それは日本代表の未来を考えても決してプラスにはならない。今の井手口には指揮官やコーチングスタッフを納得させるだけの材料を示す責務が課せられている。
「スペインで試合に出れない間も『折れないでやり続けることが一番』だと考えて、最後まで切らさずやってきたつもりです。コンディショニングも整えてきたつもりなので、あとは自信を持ってやるだけだと思います」と井手口は自らに言い聞かせるように話したが、本当に半年前のような出足の鋭さとフィニッシュの精度を示すことができるのか。そこがガーナ戦で第一に問われるポイントと言っていいだろう。
西野監督はこの日の練習の最後にわざわざ井手口を呼んで、1~2分間、会話を交わしていた。「そんなに深い話はしてないです」と彼は多くを語らなかったものの、早く元の状態に戻ってほしいという意向は伝えられたはず。
それだけ指揮官は大きな期待を寄せているということ。井手口自身もそれを強く認識したからこそ、「自チームで出れなかった分、悔しい思いをしてきたので、まずそれを晴らすこと。プラス、ここからが勝負だと思うので頑張って、楽しめたら一番いいかなと思います」と力強く近未来を見据えていた。
今から16年前の2002年日韓ワールドカップでは、井手口以上に公式戦から長期間遠ざかった稲本潤一(札幌)が初戦・ベルギー戦(埼玉)と第2戦・ロシア戦(横浜)で2試合連続ゴールを挙げ、日本サッカー史上初のベスト16入りの原動力になっている。
本人は当時のことはあまり記憶にないかもしれないが、ガンバ大阪アカデミーの先輩MFのブレイクを再現できないとも言い切れない。実際、ワールドカップのような短期決戦は、物事を緻密に考える繊細なタイプより、あれこれ考えずにここ一番に集中する野生児タイプの方が活躍しがちだ。そういう意味でも井手口は何か大仕事をしてくれそうな予感がある。そのためにもとにかく縦横無尽に走れる体力を取り戻すことが何よりも重要になる。
(取材・文:元川悦子)
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