オシム監督の名を利用。罪深き川淵会長の暴走
ジーコも初戦黒星で動揺したのか、急に戦術練習を始め、ここまでサブ組に入れていた小笠原満男(鹿島)をクロアチア戦のスタメンに抜擢し、ブラジル戦(ドルトムント)は巻と玉田の2トップで挑むという奇策に出た。
が、最初からスタメン組を決め打ちしていた指揮官にしてみれば、あくまで緊急避難的なものでしかなく、連係不足の日本は2試合とも勝ち点3を得ることはできなかった。
「史上最強」の呼び声高きタレント集団も、チームとしての一体感や組織力を欠いていたら16強入りの目標を果たせるはずがない。ジーコのマネージメント力の不足、協会のサポート体制の不備、選手たち自身の過信や散漫な雰囲気…とドイツ大会は課題ばかりが噴出する結果となった。
最悪だったのは、それを検証することなく、イビチャ・オシム監督体制へと移行してしまったこと。全てをトップダウンで決めた川淵三郎会長(当時)の罪は重いが、田嶋幸三技術委員長(現会長)らも暴走を止められなかった。
そして、こうした失敗や教訓を生かすことなく、12年後の今回、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督解任という事態に踏み切っている。日本代表の未来は険しいと言うしかないが、西野ジャパンがミラクルを起こすことはできるのか。
(取材・文:元川悦子)
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