自信を胸にW杯へ。宇佐美の覚醒が始まる
確かに「司令塔的役割をこなしつつ、フィニッシュの迫力を前面に押し出せる選手」という意味で、今の宇佐美は本田や香川を上回っているかもしれない。
今季のデュッセルドルフでは8得点3アシストという数字を残しているが、単にゴールを決める仕事を果たしただけでなく、シュートに至る過程の動きの質と量を格段に向上させているのだ。
「突破してシュートっていうシーンはあまりなかったですけど、ギャップで受けてミドルとか、最終戦なんかはちょっと2列目気味から入ってヘディングで決めたりとか、いろんな幅を持って合計8得点できたかなと思います。点の取り方、点を取るためにどういうポジションにいなければいけないか、どういう走りをしないといけないかというのを少しずつつかんでいるからこそ、結果も残せた。それはありましたね」と本人も1年間の成長に自信を深めているようだ。
10代の頃から「怪物」と言われた宇佐美はもともとボール扱いに長けているし、パス出しやお膳立てにも絡める選手。加えて、長い距離を走ってハードワークし、献身的に守備をする意識も飛躍的に向上した。今回の代表での2日間のトレーニングを見ても、頭抜けた走力を誇る同僚・原口元気(デュッセルドルフ)と並走しても、全く息が上がらないほど心肺機能が強化された様子。体脂肪率も下がり、アスリートとしてベストパフォーマンスをを出せる状態にあるのがよく分かる。
「これまでは試合の後半頭とか『結構、足重いな』と感じることは多かったですけど、今はそういうことはなくなった。むしろ後半の最後の方もどんどんギアを上げられるような感覚になってます。もちろん試合展開とかにもよりますけど、自分のフィーリングとしては最後まで90分間通してゴールを狙い続けるとか、しっかり走っているべきところにいるってことを繰り返せている。個人トレーナーと一緒に体のキレとかを上げる練習もずっとやってきましたし、その成果だと思います」と3月のマリ・ウクライナ2連戦(リエージュ)の頃にも話していたが、こうしたフィジカル面の優位性は大きな武器になりそうだ。
まず30日のガーナ戦で特大のポテンシャルを示して最終登録メンバー23人に滑り込み、6月19日のワールドカップ初戦・コロンビア戦(サランスク)にピークを持っていけるなら、この男は本当に何かをやってのけるかもしれない。「西野監督の申し子」とも言うべきアタッカーの覚醒を楽しみに待ちたい。
(取材・文:元川悦子)
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