漫画のようなキャリア。フランスで「リアルSGGK」に
自慢の語学力にも磨きがかかった。そもそもヨーロッパ主要リーグで日本人GKが活躍しづらいのは、選手としての能力のみならず、英語をはじめとした言語能力の低さが理由になっている。もともと川島はその壁をクリアしてヨーロッパでのキャリアを築き上げてきたが、今季は語学力の高さを象徴する出来事があった。
それは今年3月のこと。川島はフランスのテレビ局『Canal+』で放送されている『J+1』という番組にゲスト出演した。何がすごかったかといえば、番組の司会がフランス人コメディアンだったことだ。いわば「言葉の専門家」であるコメディアンのフランス語の言い回しなどを理解し、会話することでコミュニケーション能力の高さを証明した。
メンタル面の強靭さも、改めて証明された。やはり最下位に沈む、残留争いをするといった強烈なプレッシャーは選手のパフォーマンスに影響を与える。プロとしての責任の重さは、我々見ている側からは計り知れないほど大きいはずだ。
だが、川島はメスがどんな苦境に立たされようと全くブレなかった。むしろ尋常ではない緊張感の中で自らのパフォーマンスを高めていったのである。試合に出られない時期も、所属クラブで難しい状況に置かれていても、日本代表ではそれを微塵も感じさせないプレーを披露した。
これまで日本人GKが欧州主要1部リーグでレギュラーとして活躍できるのは、漫画の中だけだと思っていた。川島は多くの人々が想像していた壁をぶち壊し、日本人GKへの評価も変える存在になっている。
それは漫画『キャプテン翼』でドイツのハンブルガーSVや日本代表の守護神として勝負どころで数々のスーパーセーブを披露してチームを救ってきた「SGGK(スーパーグレートゴールキーパー)」こと、若林源三のようだ。
川島は折れない心やブレないプロ意識、鍛え上げた肉体、磨き上げた技術で、フランスのトップレベルでも自らが通用することを証明してきた。日本人GKの常識を覆し続ける35歳のサムライは、フランス挑戦2年目で、まさに「リアルSGGK」を体現するプレーヤーとなった。
(文:舩木渉)
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