能力を最大に活かすペケルマン監督
2トップを組むベテラン、ファビオ・クアリアレッラとの役割分担も非常にスムーズだった。相方が前線で捻出したスペースを突破、どちらかがサイドに流れたらラストパスを供給しゴールをお膳立てする。その結果、ゴール数は11ゴールに達する一方でアシストも9つに登った。自らのゴールのみならず、戦術的な要求にも幅広く答えることのできるプレイヤーに成長したのである。
もっとも、課題となった不安定さそのものは払拭しきれていない。昨年夏には約2000万ユーロの移籍金でセビージャに移ったものの、成績は芳しくなく本領を発揮しているとは言い難かった。「ゴールを決めようと自分でも焦ってしまった」とメディアに語っていたが、ファーストトップとしてフィニッシュワークを任される重圧には勝てていないようである。
しかし、他のストライカーの周りを自由闊達に動き役割を与えるならば、ムリエルは活きる。コロンビア代表のホセ・ペケルマン監督は、ラダメル・ファルカオのパートナーとしてムリエルを使う布陣をテストした。
ゴール前を主戦場とするストライカーを前線に起き、その周りのスペースを使ってチャンスメイクをする。サンプドリアで活躍したときと同じようなスタイルであり、ロシアW杯で起用される場合にはこういう役割に回る可能性がある。もちろん、4-2-3-1の左ウイングとして起用しても、ムリエルのドリブル突破は強力だ。
縦の突破を消すために集団で囲んでも、一度の方向転換でゾーンに穴を開け、組織守備を無効にしてしまう技術とスピードをムリエルは持っている。ムラっ気の多さは玉に瑕だが、調子に乗せれば止めるのは難しい大器。その潜在能力が解き放たれるのは、このW杯にもなり得る。日本にとって要警戒だ。
(文:神尾光臣【イタリア】)
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