フットボールチャンネル

アジア 7年前

助っ人アフリカ人の哀れな結末。ベトナムを騒がせた詐欺事件、選手とクラブが生み出す悪循環

text by 宇佐美淳 photo by Getty Images

今後は外国人枠削減も視野に

 チャウ氏によると、Vリーグでプレーするアフリカ人選手の平均月給は6000~7000ドル。(※ベトナムローカル制度の契約金(Tien lot tay:袖の下)を含まず)この金額は、彼らの母国の基準で考えると非常に高額なものだ。このような大金が簡単に手に入ってしまうことで、今後も安泰だと思い込み、将来を考えずに浪費する選手も多いという。ある選手は、給料日に新型iPhoneを3台も購入していたとか。

 妻がサッカーの代理人だったペンは、もう少し現実が見えていたのかもしれないが、彼の場合は所属クラブが解散するなどの不運も重なってしまい、当てにしていた契約金も入ってこず、2015年にドンナイFCを退団してからは、所属先も見つからなかった。

 何百人ものアフリカ人選手たちを見てきたチャウ氏によると、引退後は生活に行き詰る者が圧倒的に多いという。

「母国に戻って仕事しても、ベトナム時代のように稼ぐことは出来ず、ベトナムに留まってプレーを続けても、新しく入ってくる若い選手たちとの競争に勝つことは出来ない。引退後は、飲食店や洋服販売などを始める者も多いが、十分な稼ぎが得られなければ、悪い道に走ってしまう者もいる」と同氏は語った。

 また、チャウ氏は元サッカー選手と名乗っているアフリカ人で成功者と落伍者を簡単に見分ける方法を教えてくれた。それによると、成功者は、ホーチミン市7区フーミーフンなどの新都市区に居住し、そうでないものは、1区ファムグーラオ通りやブイビエン通りなどのバックパッカー街を根城としているケースが多い。

 ベトナムサッカーに汚点を残した元外国人Vリーガーによる今回の詐欺事件。Vリーグは外国人枠を年々削減していく傾向があり、その分、外国人選手間の競争も熾烈化している。この事件は、助っ人をいともたやすく使い捨てるクラブ側、そして、将来設計を描くことを知らない選手たちに、やり方を改めよと警鐘を鳴らしているのかもしれない。

(取材・文:宇佐美淳【ベトナム】)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top
error: Content is protected !!