衝撃が走ったアフリカ人選手による詐欺事件
外国人枠が僅かに2枠しかないベトナムプロサッカーリーグ(Vリーグ)において、最も重宝される助っ人。それは強靭なフィジカルを武器とし、圧倒的な高さとパワー、スピードを持つアフリカ人選手たちだ。Vリーグ各クラブにとって、如何に優秀なアフリカ人ストライカー、またはセンターバックを迎えるかが毎年強化のポイントとなる。
ベトナムでプレーするアフリカ人選手たちは、母国では到底稼ぐことができない高額な報酬をもらっており、かなり恵まれた待遇にある。しかし、引退後の生活はかなり厳しいようで、中には犯罪に手を染めてしまう者もいるようだ。
4月はじめ、ベトナムのサッカーファンを驚かすニュースが飛び込んできた。元プロサッカー選手のグエン・ハン・チェウコ・ミン(本名:ブノワ・チェウコ、通称ペン、35歳)が詐欺容疑で逮捕されたというのだ。カメルーン出身のペンは、2013年にベトナム国籍を取得。かつてVリーグのキエンザンFCやドンタップFC、ドンナイFCで活躍し、外国人ながらキャプテンも務めた名選手だったが、この3年は無所属の状態が続いていた。
現役時代の輝きを知っていた筆者は、逮捕の知らせを聞いて我が耳を疑ったが、アフリカ人選手と強いパイプを持つ代理人によると、こうしたケースは決して珍しいものではないという。
毎年アフリカから多くのサッカー選手たちがトライアウトを受けるため、ベトナムに渡ってくる。ペンもその一人だった。現在、ハノイFCで中心選手として活躍するウガンダ代表MFモーゼス・オロヤは以前、母国のメディアに対し、「Vリーグでは、たった1年働いただけで、ウガンダで60年働いた分の稼ぎが得られる。」と話していた。
人生の一発逆転を狙って、カメルーン、セネガル、ナイジェリア、ウガンダ、マリなどから、この15年あまりの間に、千人もの選手がベトナムに来たとされている。契約を勝ち取った者は、高い収入を得ているはずだが、ベトナムを去る時には、無一文になっている者も少なくない。