西野朗監督が30日のガーナ戦に向けた日本代表メンバーを発表した【写真:編集部】
18日、日本サッカー協会(JFA)は30日のガーナ戦に向けた日本代表メンバーを発表した。選出されたのは27人。西野朗監督は追加招集の可能性も示唆したが、基本的にはこの27人からロシアワールドカップへ向けた23人へと絞り込んでいく。
蓋を開けてみるとヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が高評価していたメンバーが多く選出されていた。それもそのはず。西野監督は技術委員長時代からハリルホジッチ氏に一定の評価をしていた。選手選考基準が似通ってしまうのは当然である。
ハリルホジッチ体制でワールドカップ本大会メンバー入り濃厚と見られていて、今回のメンバー入りしたのが以下の19人。
<GK>川島永嗣、東口順昭、中村航輔
<DF>長友佑都、槙野智章、吉田麻也、酒井宏樹、昌子源、遠藤航、植田直通
<MF>長谷部誠、本田圭佑、香川真司、山口蛍、原口元気、宇佐美貴史、柴崎岳、大島僚太
<FW>大迫勇也
ただし、明確な違いがあった。それは、ハリルホジッチ氏が基本的にスペシャリストを複数人想定していたのに対し、西野監督が重視したのは「ポリバレント」だ。これまでの発言およびこの日の記者会見での様子から察するに、西野監督はポリバレントを「複数ポジションをこなせる」という意味合いで使っている。
DFでは、左サイドバックのスペシャリストである車屋紳太郎ではなく、左右どちらもこなせる酒井高徳を選んだ。MFとFWでは、トップ下タイプの森岡亮太とハリルホジッチ氏がウイングのジョーカーとして期待していた中島翔哉が落選し、幅広いポジションをこなせる岡崎慎司と武藤嘉紀が復活した。
「ポリバレント」「幅広い」という言葉は聞こえはいい。だが、様々なポジションをこなせる反面、決め手に欠けるともとれる。「どちらのポジションもできる」と「どちらもできない」は紙一重だ。
ハリルホジッチ氏は、対戦相手であるコロンビア、セネガル、ポーランドを「かなり」格上に見ていた。組織的に戦いつつも、局地的には個人対個人になってしまう場面を想定し、「どちらも無難に」よりも「難はあるがハマれば強い」を優先していた。
ワールドカップは短期決戦だ。複数ポジションをこなす選手はベンチメンバーとして心強いと思われがちだが、形成を逆転する、あるいはピンチの時の救世主としては期待しにくい。今回の27人には、試合の流れを変えるような「切り札」的存在がいない。日本に不利な展開で策がなかったザックジャパンのような不安を感じざるを得ない。
もちろん、これですべてが決まるわけではない。西野監督は記者会見では慎重に言葉を選びながらも、時おり矛盾しているようなことも言っていた。平たく言えば、何を言いたいのかよくわからない「西野節」だった。
マスコミを煙に巻くのは昔からの西野監督のスタイルとも言える。要するに、手の内は試合になるまで見せない。「勝負師」西野朗は複数の策を用意し、本番までに練り上げるはずだ。
ただし、現時点ではその細い藁(わら)にすがるしか望みはない。
(取材・文:植田路生)
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