攻守で圧倒した中盤のキーマン
この試合では、選手個々も攻守に抜群のパフォーマンスを披露した。
21分に続いて49分の2ゴールで試合を決めたグリーズマンをはじめ、中盤のガビとコケがその力を発揮していた。中盤のセンターに入ったガビは、先制点のアシストに加えて89分には自らもゴールを決めて勝利に大きく貢献した。
そして、左アウトサイドのコケは影のMVPと言える働きを見せた。この試合では、守備面では両チーム最多となる7回のボール奪取を記録し、攻撃面でも両チーム最多となる5回の決定機を生み出し、2点目と3点目でアシストを記録した。
アトレティコは、2011年からチームを指揮するディエゴ・シメオネ監督のもとで選手、チームともに質を高めてきた。一般的に、“カウンターサッカー”は弱者の兵法とされ、技術はなくとも運動量や忍耐力で勝負すると考えられている。
一方で、このアトレティコの“攻撃的カウンター”は選手たちの高い技術によって成り立っている。仮にこの試合の11人でボールを支配することを狙えば、多くのチームを上回れるだろう。
しかし、それだけでは「並のポゼッションサッカー」に留まってしまうかもしれない。この技術の高い11人が労を惜しまず守備の意識を高め、“チーム”として完璧な統率の下でプレーするからこそ、驚異的な強さを維持して重要なタイトルという成果を手にできているのだ。
(文:海老沢純一)
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