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Jリーグ 7年前

天野純が磨き上げた「左足1本」へのこだわり。マリノスで目指す「俊さん」の継承

text by 舩木渉 photo by Getty Images

中村俊輔との違いと共通点

中村俊輔
天野純にとって中村俊輔はポジション争いのライバルであると同時に憧れの存在だった【写真:Getty Images】

 もちろん練習場に毎日通っているわけではないので自分が見た限りでの話だが、そのことについて天野本人に尋ねると「キャンプでやったくらいで、それ以降はほとんどフリーキックの練習はしていないですけど」と言う。そして「感覚がいいのもあるし、いまは入っているので、特別(練習を)やる必要はないのかなと思っています」と続けた。

 これまで磨いてきた技術はそう簡単に錆つかない。大事にしているのは「フィーリング」。練習で無理に調整して、いい時の感覚が失われることを避けているようである。良好な「フィーリング」が保てているからこそ、続けざまにゴールを襲う直接フリーキックを蹴ることができる。

 中村俊輔のマリノス在籍時の記憶をたどってみると、全体練習後にグラウンドに残り、GKを立たせて、これでもかとフリーキックを蹴っていたことを思い出す。最初の1本から最後の1本まで、驚がくの精度とスピードのボールをゴールネットに次々沈めていく姿からは神々しささえ感じられた。

 中村俊輔は天野と違い、自らのフリーキックの感覚を弛まぬ鍛錬によって研ぎ澄まし、試合での1本に臨んでいたと言えるだろう。他の選手たちとは圧倒的にレベルの違う軌道のキックを蹴り続けられたのは練習の賜物であり、一瞬の勝負にかける準備は恐ろしいほど徹底していた。

 他方で、天野と中村俊輔に共通する考えもある。それは「左足1本で勝負を決める選手になる」ことだ。昨年4月に行われたマリノス対ジュビロ磐田、2人が初めて対戦相手として戦った試合で、チームは勝利したものの天野は終盤にフリーキックを外して悔しさを噛み締めていた。

 その時、こんなことを話していた。

「俊さんから1対1でボールを取れた場面もあったけど、まだまだ超えられない存在。最後のフリーキックにしても、2-1で迎えた最高のシチュエーションで、やっぱりあそこを決めきらなければいけないし、俊さんだったらあそこは絶対に決めていた。今日は勝てたんですけど、僕自身は手放しでこの勝利を喜ぶことはできない」

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