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神戸移籍なるか。イニエスタの真のすごさとは? 最強バルサを支えた“魔法使い”を紐解く

text by 舩木渉 photo by Getty Images

イニエスタが唯一無二である理由

イニエスタ
デビュー間もない背番号24だった頃のイニエスタ。当時から視線が完全に下に落ちている写真は非常に少なかった【写真:Getty Images】

 ただ、先述したようにイニエスタにC・ロナウドやメッシのような派手さはない。では、何が優れているのか。それは「脳」である。坂上・山本(2009)によれば、人間の脳には感覚情報処理から認知情報処理、あるいは動機づけ、感情を経て、価値の生成が行われ、意思決定がなされ、運動情報として処理されるメカニズムがあるという。

 イニエスタの場合、Aという事柄を感じ、認知してから具体的なBという動作に変換するまでの意思決定のスピードと正確さ、そして目に見える形であらわれるBという動作の精密さが、他の選手に比べて際立っている。これこそが世界最高峰といわれる所以である。

 さらに、正しい判断にもとづいて局面を一変させる創造性と、経験に基づいたプレーの再現性や継続性、発展性のバランスが極めて高いレベルで同居している。それでいて1つひとつの動作がシンプルなのである。空いたスペースに入り込んでパスを受け、次のスペースと味方にパスを出す。基本的にはこれだけだが、時に意外性に満ちている。

 見ている者があっと驚くようなボールコントロールも、超速で行われる脳内での意思決定がもたらしたもので、それは過去の経験によって積み上げられた脳内のメモリーや判断を複雑に組み合わせて引き出されるものである。

 ゴールやアシストの数こそ少ないが、ゴールシーンを2プレー、3プレー遡ってみると実はイニエスタが起点になっていた…というシーンはこれまでに数多く目にしてきた。そして、見落としてしまいそうな何気ないプレーが、ゴールが生まれるうえでクリティカルな働きをしていることも多い。

 ボールを扱う技術がずば抜けて高いため、パスを受けた瞬間だけ足もとに視線を落とせばよく、それ以外のほとんどの時間は顔を上げて周囲の状況を確認できる。そうやって集めた大量の情報をもとに次のプレーを瞬時に決断する。

 時には自分から最も遠い反対サイドの状況まで把握できていたり、ゴールまでの最短経路が見えていたり、イニエスタの目には2手先、3手先の風景が描けているようである。故にボールを前に進めることがリスクを伴うと判断すれば、すぐにバックパスを選択することもある。狭いスペースでも質が落ちることはなく、所作はシンプルで、無謀なプレーが極端に少ない。

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