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どうなるトッテナム。CL出場権に翻弄される古豪、負の歴史を清算できるか【粕谷秀樹のプレミア一刀両断】

シリーズ:粕谷秀樹のプレミア一刀両断 text by 粕谷秀樹 photo by Getty Images

「スパーズィー」の呪いを払拭できるか

 ポチェッティーノ監督の基本的ゲームプラン──ハイライン・ハイプレス──がチームに浸透し、好調時のスパーズは世界最先端のパフォーマンスを披露する。プレミアリーグでも19節のバーンリー戦から11勝3分無敗の快進撃。

 カイル・ウォーカーがマンチェスター・シティに去り、トビー・アルデルヴァイレルトが負傷のために長期欠場を余儀なくされ、デレ・アリが昨季ほどの出来ではなかったにもかかわらず、最終盤までCL出場権を争っているのだから、その実力に疑いの余地はない。シティやリバプールには劣るものの、試合内容もなかなかエキサイティングだ。

 ただ、スパーズはもともと勝負強くない。プレミアリーグ用語のひとつに「スパーズィー」があるが、「結局はダメ」「だらしがない」という意味だ。サー・アレックス・ファーガソンがユナイテッドを率いていた当時、「おまえら、今日はスパーズ戦だってことを忘れたのか」とハーフタイムに檄を飛ばすと、後半に一挙5得点を奪った一戦もある。要するにナメられていたのだ。

 ポチェッティーノ監督のもと、ようやく優勝争いの常連になったとはいえ、トップリーグの優勝は1960/61シーズンが最後だ。2007/08シーズンのリーグカップ以降、タイトルからも遠ざかっている。

 ファンデ・ラモス、ハリー・レドナップ、アンドレ・ヴィラス・ボアス、ティム・シャーウッドと監督の人選にも一貫性がなく、ポチェッティーノ監督が首を傾げた勝者の哲学が、植えつけられる環境ではなかった。

 もっとも、サー・アレックス(前出)がユナイテッドに26年にわたって植えつけてきたベーシックな論理を、デイビッド・モイーズとルイ・ファン・ハールがたったの3年間で台無しにしたのだから、就任4年目のポチェッティーノでは「スパーズィー」を根本的に改善するのは難しい。

 だからこそ、FAカップは喉から手が出るほど欲しかった。CLやプレミアリーグほどメジャーではないものの、FAカップは世界最古のタイトルである。スパーズに箔が、選手たちには自信がつき、今後のチーム作りにも大きなプラスをもたらしたと推測できる。ポチェッティーノの落胆(先述)も無理はない。

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