名波監督も目を細める阿吽の呼吸
「もっとやれることはあるし、もっと押し込める時間帯も作りたい。チャンスもあったし。特にサイドを崩して行ったところのセンタリングの精度とか、まだまだ改善できるところはいっぱいあるし、自分も含めてよりいい選択肢があったんじゃないかなと。シュートを打てる場面もあったので」
2連勝に貢献した29歳は、反省も口にする。シャドーのポジションは現在、アダイウトンに加えて中村俊輔も肉離れで離脱中だ。昨季のレギュラーを同時に欠いているが、松浦と山田が実力を発揮し、また違った彩りをチームに加えている。
「このポジションでは今、アダと俊さんがいないけど、ということは自分のパフォーマンスが良ければ使ってもらえる。他の選手もそれをわかっているから、いい競争に繋がっていると思う。俺たちも使ってもらっているからこそ、いいプレーをして結果を出さなきゃいけない。チームとして勝つのが一番で、自分がいいプレーをすればチームのプラスになる」
松浦は誰と組んでも絶妙な連係を見せ、味方の持ち味を最大限引き出すことができる。そんな松浦の“最高の”パートナーがアダイウトンだった。
「アイツらにしかない阿吽の呼吸があるよなあ」
名波監督はそう言って目を細めたことがある。特徴が異なる彼らだが、感覚が似ているのだろう。例えば、他のペアでは通らないようなワンツーを2人は成立させてしまう。彼らの間をボールが行き交うと、絶妙なコンビネーションが生まれ、相手を翻弄することができる。
その“掛け合い”を試合のピッチでしばらく見られないのが残念だと松浦に伝えると、返ってきたのが冒頭の言葉だった。
親友のため、そしてチームの勝利のために松浦拓弥は全力を尽くす。その決意は、ゴールデンウィークの連戦でも随所に見られたのだった。
(取材・文:青木務)
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